新潟みなとトンネルを歩いて入船屋でうどんを食べた(入船屋オススメ)

今日(2019/02/16土)、どっか行こと思って、新潟みなとトンネルを歩いてみることにした。

このトンネル、自歩道と呼ばれる歩行者・自転車専用の道があるのです。歩いてみたかった。なんで歩きたかったのかと言われたら困る。信濃川の下を通るトンネルがあると聞いてかっこいいなと思ってたから……。

トンネルは普通によかったし、なにより、左岸側にあるうどん屋・入船屋が特によかったので書く。

トンネルまで

古町までバスで出て、そこからC51という路線に乗り継ぐ。この路線はみなとトンネルの車道を走る。それでトンネルを抜けて、帰りは歩いてやろうという算段だ。

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C51は土日祝日は運休だった。俺はいつもこうだ。

C50という路線でも近くまで行くみたいなのでそっちに乗って適当なバス停で降りた。

トンネルを目指して歩く。海沿いっぽい景色になってくる。思いのほか潮の匂いはしない。

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二連新潟造船

トンネルの入口まで来た。河の下をもぐるため、やや下っている。

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こんな感じで自歩道と車道が完全に分かれている。水底トンネルとしては珍しいらしい。

トンネル内にあった模式図が分かりやすい。こんな感じで信濃川をくぐっているトンネルだ。そうか、入船みなとタワーから降りてこれたのか。

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トンネル内と入船みなとタワー

しかし、トンネル入り口からタワー直下までの壁に、小学生か中学生がたぶん図工の授業とかで作ったのだろう海の生き物の陶器が飾られていて面白い。

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なかなかすごい

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リアルすぎてすごかったかに

せっかくなので、左岸側のタワー・入船みなとタワーの展望台に上がってみた。無料。

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なかなかいいぞ。人も少ない。

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意味もなく撮った裸地

新潟の街や日本海をしばらく眺めたのちにトンネルに戻る。こんな感じで、なんというか清潔なトンネルです。

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ちゃんと明るい

河の下だから水の流れる音とか聞こえるかなと思っていたけど、壁をはさんだ車道の車の音しか聞こえなかった。といっても、トンネルは川底の20m下らしいから、どっちにしろ聞こえはしなかったか。

直上が河ゾーンに入ると、新潟の海や河で見られる魚介の写真とキャプションが壁に貼られている。こういうの好き。

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タイリクバラタナゴさん

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えっ南蛮エビって甘エビのことだったの…? 別種だと思ってた…

けっこう人通りがある。ジョギングしている人が多い。トンネル内は寒くないし、往復すれば結構な距離があるから、走るのにちょうどいいのかも知れない。

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ひっきりなしに追い抜かれる

どうせなので、右岸側のタワー・山の下みなとタワーの展望台にも上がってみた。こちらも無料。

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展望台からの街並み

なかなかよかった。

ちなみに、トンネル自体の全長は1.5km弱だけど、タワーとタワーのあいだの距離は900mくらい。いい運動になります。

うどん屋・入船屋

そして今回の個人的ハイライト。うどん屋入船屋さん

入船みなとタワーの南側の駐車場を抜けてすぐのところにある。

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新潟島最北端の飲食店ではないか

内装の写真は撮ってない。食べログの写真とか見よう。外見から想像つかないくらいカフェっぽい。でも座敷もある。地元の人たちっぽいグループが3組、うどんを食べていた。子供たちはカルタをしている。店内には小さくゆったりとジャズがかかっている。店の奥で卓球ができるらしい。壁には一面というか二面くらい漫画がならべられている。

こう書くとカオスなんだけど何か妙に落ち着く。店員さんも親切だし。

うどんも美味しかった。麺も美味しいし、なによりつゆがそこはかとなく美味しい。入船うどんという、じゃこ天が乗った温かいうどんを頼んだ。じゃこ天の上に盛られたいりごまとしょうがをつゆに溶かすとまた美味い。

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"入船うどん"(680円)と"天ぷら"(100円)

どうも何匹か猫がいるようなのだが、今日は姿を見せなかった。残念に過ぎる。

行きつけの店というのが近所のラーメン屋くらいしかないけど、ここは素直にまた来たいと思った。俺特攻かも知れませんが、雰囲気よくてこのお店はおすすめですよ。

帰りに

どうにもバスの時間が合わず、ピア万代まで歩いた。

www.bandai-nigiwai.jp

のどぐろとバイ貝を買ってあとはバスで帰った。

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バイ貝はゆでて食べた。この貝がとても好きで。貝の肝ってなんであんなに美味しいんですか? のどぐろは焼いて食べた。さすがに美味かった。

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のどぐろ先生

いい休日だった。

青春18きっぷと米原の悲劇と逞しくなる私

お題「もう一度行きたい場所」

滋賀県米原にまた行きたい。

 

青春18きっぷでふらふらするのが好きだ。……就職してからはできてないけど。

 

大学が茨城で、実家が広島である。しばらくは夜行バスで帰省していた。だいぶ乗った。

yamasaki1ma.hatenablog.com

しかし飽きてきたのもあって、帰省の手段を変えることにした。そうして18きっぷデビューした。東京から広島まで15時間くらい。始発で出発して休憩なしに移動し続ければギリ深夜に広島に到着する。乗り換えとか恐れていたけど、だいたい、始点の駅→終点の駅→そこが新たな始点の駅になる、の繰り返しだから特に難しいこともなかった。腰こそ痛くなるが、まとまって読書する時間にしたり、車窓を眺めたり、疲れたら寝たりすれば15時間もさほど苦痛ではない。

そうやって何回か長距離鈍行旅をしているうちに、慣れたというか舐めるようになったというか、さほど真剣に考えることもないな感が現れはじめた。具体的に言うと、始発で出発する予定の日に昼過ぎに起床した。どう頑張っても当日中に広島にはたどり着けない。まあいいだろう、行けるところまで行けばなんとかなるだろう。

そうして電車に乗って、終電でたどり着ける限界が米原だった。まあでも米原は新幹線も停まる駅みたいで、駅前に出ればファミレスなりネカフェなりあるだろう。そこで始発まで待てばいい。もう7,8年も前だ。当時はまだスマホは普及しておらず、出先でススっと検索したりできる時代ではなかった。

米原で降りて終電を見送り、駅を出る。

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終電が行ったあとの米原駅

あ、待って、うそでしょ。

なんにもない。

ファミレス・ネカフェはおろか、コンビニの1件もない。端的に言って駅前なのに暗い。やばいぞ、これはやばい。季節は夏であるため、最悪、駅のベンチとかに座って朝まで待てばいいが、でもこれはやばいぞ。

しかし、この"命には関わらない危機"にテンションが上がってきた。朝までどう過ごしてやろう。駅の案内板を見ると、どうやら歩いて20分くらいで琵琶湖のほとりに着く。いよっしゃ、夜の琵琶湖見に行こーじゃん! 1人静かにハイテンションで見知らぬ地の夜を歩き始める。

暗く眠るしょぼい市街地を抜けるとすぐに田園となった。さすがの"米原"、田んぼしかない。あんまり見えないけど。

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飛び出し坊やの目も光る

15分ほど歩くと幸いにしてセブンがあった。酒と朝食を買った。

そうしてもうすこし歩くと琵琶湖が見えた。あっ、ここだけかもだけど、琵琶湖のほとりって砂浜になってるんだ。対岸に工場の明かりが見える。

 

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手前が砂浜になっている。よく見えないけど。

なんだかいい感じではないか。 旅って感じだ。俺の旅観が狂っている可能性もある。

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さっき買った酒を飲みつつ夜の琵琶湖をながめる

あとは始発の5:00まで待つだけだ。砂浜に横になってみる。ちょっと寒いが、着替えの服をかけたら気になるほどではなかった。割と普通にぐっすり眠った。

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このガードレールの下で寝た

 すっきり目覚めて始発に合わせて米原駅に戻った。

予想外の野宿となったけど、とりあえず冬じゃなければなんとでもなるものだなと分かって、それからはもう18きっぷ旅をする際には予定を立てることもなくなった。なんとでもなるから。

 

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どっかの公園のSL模型の中でも野宿した

そんなわけで帰りも野宿した。終電で降りた焼津駅の周辺をふらふらしていたら公園があって、使われなくなったSLが置いてあったのでその中で新聞紙を引いて寝た。起きてSLから出たら、掃除をしていたおっちゃんに「あんた」と声をかけられる。「はい、おはようございます」と返す。「泊まったわけか」「泊まったわけです」。特になんでもなさそうなのでそのまま駅まで歩いた。

そんなこんなで、(少なくとも暖かい時期なら)野宿でもなんでもなんとかなると分かってしまい、18きっぷでふらふらするくせがついてしまった。

またどこか行きたい。いま、米原の駅前がどうなっているのかまた行って確かめたいし、また砂浜で寝たい。

【小説】二人のスーツの男

俺は、東京の中小IT企業戦士だ。今日も激務を生き抜いて終電である。
俺が使っているこの路線の終電は意外と混んでいない。まあ毎度立たないといけないレベルだが。

今年で30になった。会社から役職を与えられ、後輩もそこそこできた。
俺は、大学では冴えなかった。勉強というものが苦手だったのだ。なぜ卒業できたのかもよく分からない。
そのころ俺と同じゼミに配属を申し出た、青木という男が居る。俺はあいつのことが大嫌いだった。
要領のいいやつで、頭もいい。顔もいい。運動もできるらしい。なんだこいつは、俺を劣等感の塊にしたいのか。
社交的な青木は常に友人がいて、人生を楽しく生きているように見えた。やはり、俺はあいつが嫌いだった。

なんとなく青木のことを思い出した。さっき、飲み帰りらしい学生の集団とすれ違ったからかも知れない。
そうして終電に乗った。1つでも空いている席を求め、車内を見まわす。
そうして気付く。あの寝ているスーツの男は青木じゃないか?
俺は青木と思われる男の前まで移動する。体のつくり、頭の形、耳のピアス跡。
うつむいていて顔は見えないが、こいつは間違いなく青木だ。

こいつ、たしか博士まで進んだと聞いていたが今スーツ着てるってことは就活中? 博士って何歳で出るんだっけ?
よく分かんねえな。こいつ起こしてみるか。

青木の靴に何回か俺の靴をぶつけてやる。お前、寝たフリだろ? 久々にしゃべろうぜ。
しかし青木は顔を起こさない。それはあまりに不自然な反応だった。
これは間違いなく寝たフリだ。終電マスターの俺にはそのあたりよく分かる。

なぜだ? 俺を不審者と思っているのか? それでも、あの頃のお前は、顔を上げて、にこやかに対応するやつだったろう。
俺は、こつこつこつこつと、4回、明示的に青木の靴を蹴った。お・き・ろ・よ。さすがに顔を上げるだろう。
……上げないか。ビクついているみたいだ。「青木」と声を掛けた方がいいのかも知れない。
だが、よく考えてみれば、結局、俺はこいつのことが嫌いだったのだ。まあいいや。

車内は少しにぎやかになっていた。青木の前を移動するのは、俺が下りる駅ではないと難しそうだ。
俺が下りる駅は終点に近いぞ。青木、それでもお前は顔を上げないか?
学科以降のお前のことを俺はあまり聞いてない。
万能感に溢れているように見えたお前を変えたのは何だ? どうしてそうなってしまった? お前は、本当にできるやつだっただろう。

終点に近づき、乗車客は疎らになっていった。俺も降りる駅が近づいた。
もう一度、青木の靴を何度か蹴ってみる。すこし体がピクりと跳ねたが、ついに顔は上げなかった。

到着駅に着いて、俺は電車を降りた。
振り向いて車窓を外から眺める。やつは顔を上げていた。そして、やはり間違いなく青木だった。

【うさぎアイランド】大久野島でうさぎとたわむれた


猫がたくさん棲む島を"猫島"と呼んだりする。
そのメソッドに則れば、広島県大久野島(おおくのしま)は"うさぎ島"だ。
天然のうさぎが山ほどいる。大久野島でうさぎとたわむれてきた話をしたい。

(ちなみに来訪日は2015年09月24日です)

 

大久野島はここ:

 

 

大久野島では餌は売られてないから注意しよう。

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船乗り場の近くのファミマで餌が売られている。

 忠海(ただのうみ)から出ている船に15分ほど乗って、降りたらもううさぎアイランド。

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大久野島さん


Wikipedia見ただけなんだけど、なんか小学校の飼育小屋から逃げたうさぎが繁殖したらしい。

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ファースト壁うさぎ

山ほどうさぎが居る:

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餌を餌と思わないぜいたくうさぎ

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ブレうさぎ。

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黒うさぎ。

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近うさぎ。

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凛々しいうさぎと奥うさぎ

 

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こんな感じで普通に寄ってくる。赤い子は妹です。

 

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手から食べてくれます。

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ひざにも乗ってくれます。

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わちゃわちゃうさぎ(その1)

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わちゃわちゃうさぎ(その2)

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なんにゃ。

という感じで素敵アイランドです。行こう、大久野島

 

うさギャラリー:

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にげうさぎ, 擬態うさぎ, よりうさぎ
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ねむうさぎ, うまうさぎ, 事務所通してうさぎ
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よそみうさぎ, それおいてけうさぎ, う詐欺

 

【小説】私の心で空を飛ぶ

半月よりもすこし膨らんだ月が沈むころ、今夜も私は出かけることにする。

寝巻の上にセーターとコートを着込む。耳まで隠れるニット帽をかぶる。
くちびるに厚めにリップを塗る。マフラーで顔の半分を隠す。手袋をつける。

部屋の電気を消して、音が鳴らないようにベランダの扉を引く。
予想通りに外気は冷たくて、マフラーから漏れる息も白くなる。
ちぎった綿のような雲々の向こうに夜の空が真っ黒に広がっている。

このあいだ買った寝袋を取り出し、足を入れて胸まで持ち上げる。
やっぱりひどい格好だなこれ。でもここまでしないと寒いしなあ。
「……ふふ」
それでもなんか微笑んじゃう。

暖かい紅茶を入れたタンブラーを寝袋の下のコートのポケットに突っ込む。
寝袋にくるまったミノムシみたいな姿のまま、
転ばないように跳ねてベランダに出る。後ろ手に引き戸を閉める。

「行きましょうか」

軽く跳ねてそのまま浮き上がる。
私は空に向かう。ゆるやかな速度で上昇していく。

「……寒いなあ」
できるかぎりの格好をしたつもりだったけど、冬の夜の空はどうにも足先が冷たい。
上半身の防寒ばかり考えてしまってたかな、寝袋の中で両足をこすりあわせる。
体をくるりと地上に向けると、私の家の屋根はずいぶん小さくなっていた。

顔を上げると、この町を取り囲む山々が黒く沈んでいるのが見える。
山の形だけは分かるけれど、森も地面も生き物もみんな闇の下に眠っている。
まばらに立つ送電塔のランプが小さく赤く点滅しているだけ。
山のすそに流れる川もほとんど判別できない。
目をこらすと月の光を切れ切れに反射しているのが見えて、
水が流れていることがようやくわかる。

雲が近くなった。
どうにもまだ寒い。すこし体を慣らしておこう。
寝袋に包まったまま軽く伸びをして、そのまま空に横たわる。
うつ伏せになって、私の町を見下ろす。
屋根に隠れているせいか、真下の景色にそれほどの力を感じない。
少し顔を上げると山のふもとまで広がった明かりが見える。
なんだかふしぎな気分だ。
町の生活の音はここまでは届かない。かすかに電車の走る音だけが響く。

寝袋の中でコートのポケットをあさって、チョコの包装紙をむく。
なんとか口元まで運んでかじる。甘くておいしい。

そろそろ行こうか。
体を起こして、私はさらに上に昇っていく。
雲の中に入ってしまわないように気を付ける。
冷たいし顔が痛いし全身が濡れてしまうし、何もいいことがないから。

そうなんだけど、私の昇っていくスピードより雲の動きはずっと速い。
「うわっぷ……」
だからときおり引っかかる。
これほんとに嫌なんだよ……。
雲に入ってしまうと視界がなくなる。
なんとか寝袋から両手を取り出して、顔を覆う。そのまま上昇して、雲を抜けるのを待つ。
顔も寒いけどなんとかなっている。なにより足が寒い。
体育座りの格好で体を丸めるけど、寒いものは寒い。靴下も二重に履いたのになあ……。
「……あっ、そうか!!」
そうだ、今度からは寝袋の底にカイロをいくつか入れよう!
どうしてこんな簡単なことに気付かなかったんだろう。

気を紛らわせるためにぐるぐると旋回していると、雲を抜けた。
雲の上に出たことは、いつでもすぐに分かる。
まず1つには、地上の音が消えるからだ。ここでは、風が吹く音しか聴こえない。
そしてなによりも、明るいから。雲も大気も遮らない星の光がここにある。
地上から見上げると真っ黒なのに、上空から見上げる空は濃い紺色だ。とってもきれい。

コンディションはいいみたいだ。遠くに風が吹く音は聴こえるけど、
少なくとも、私がいるこの場所には強い風は吹いていない。
とはいえ、上空の風向きが変わることなんてよくあることだから、
寝袋にくるまってしばらく様子をうかがう。
……あったかいなあ。さっきまで寒かったのは、やっぱ風があったからかなあ。

5分ほどそのまま待っていた。わりあい気持ちよくて寝そうになってしまった。
とりあえずは大丈夫そうだ。そう寒いとも感じない。
寝袋のジッパーをすこし下ろして両腕を出す。
たぶん外気温はかなり低いと思うけど、火照った体には心地よい。
上体を起こして、改めてあたりを見渡す。
地上から見るより月は大きく明るく、その周辺の星は光に隠れて見えない。
だけど、空の端の方には月に惑わされない星々が見える。

「んっふっふふ」
ポケットに入れておいたタンブラーを取り出す。
蓋をあけると湯気が立ち上った。ゆっくりと紅茶を飲む。おいしい。
ほうと吐き出す息もすべて白く消えていく。
ゆるく吹く風に体が流され、私の体は回る。
月と、星と、雲と、その下の淡い光と、私の白い息と。
紅茶の香り、私の体の温かさ、空気の澄んだ冷たさ。

そのうち紅茶を飲み終える。体は暖かいけど、そろそろ戻る頃合いだ。
空になったタンブラーをポケットに押し込んで、体を寝袋にくるむ。
そうして私は地上へと帰る。帰りは自由落下だ。耳鳴りさえ気にしなければすぐに着く。

うまく減速してベランダに降りる。部屋に入って、寝巻以外の装備を脱ぎ捨てる。
今日もよかった。ベッドに入りながら考える。布団は冷たいけど上空ほどではない。
「……なにか、……次のためのこと……、あったよなあ……」
枕もとで充電していたスマホをちらりと確認して、私はすぐに眠りについた。

【植物コラム】キョウチクトウのなまえだには毒がある

キョウチクトウという木を知っているだろうか。
過酷な環境でも育つため、街路樹なんかとしてもよく用いられている。
その辺を散歩していても民家に植えてあるのを見かける。

さて、大学の研究室で過ごしていたある日、
同じ研究室で働いているガチ植物学者の女性Nさんと、
野外調査に向かうことになった。

当日、Nさんの車で高速道路を走っているとき、
Nさんからクイズが出された:
「山﨑くん、道路の脇に生えてる植物の名前わかる?」
「えーと、キョウチクトウかな」
「お、当たり」
広島でよく見かけた気がして、自然と名前が出てきた。

キョウチクトウってね、毒があるんだよ」
「へー、どこに毒があるんですか?」
「なまえだ」
名前だ? 言葉を発すると呪われるとか呪術的な話?

しばらく噛み合わない話を続けて、ようやく、
彼女が「"生枝"」と言ったのだと気付き、
また、彼女も、僕が「"名前だ"」と勘違いしたのだと気付き、
2人で大笑いして事故りかけた。

そのときに教えてもらったけど、キョウチクトウの枝を
バーベキューの串の代わりに使って何人か死んだ事件があるとか、
けっこうな強さの毒らしい。身近に潜む恐怖。

それから、いまググってみると、キョウチクトウ広島市の市の花だった。
戦災後、最初に生えてきたのがキョウチクトウだったからとか。
広島市街にはあちこちにキョウチクトウが植えられているような記憶がある。

【広島出身者が贈る】広島風お好み焼きをご家庭で作るためのレシピ

はじめに

島風お好み焼きをおうちで作るやり方を書こうと思う。写真と動画もあるよ!

本場のお好み焼き屋は大きな鉄板でお好み焼きを作る。
それに似た機構であるホットプレートだと作りやすい。
でも、ご家庭にホットプレートがあるとも限らない。うちにもない。

大丈夫だ、2口のコンロと2枚のフライパンがあればなんとかなる。
さあ、単なる"お好み焼き"とは全く異なる体験をしよう。

 

※私は広島出身であり広島風お好み焼きを"広島焼き"と言われるとなぜかむっとするタイプであり広島では世間一般に"お好み焼き"と呼ぶ食べ物を"関西風お好み焼き"と表現するちょっと小馬鹿にした印象を受けるかも知れないけどでも関西風お好み焼きもこれはまた美味しいですよね広島風だろうが関西風だろうがお好み焼きは肉も野菜も卵も小麦粉や麺も一体となった完全食だと思っている。


材料(1枚ぶん)

必須:

  • 小麦粉: 適量
  • だしのもと: 適量
  • キャベツ: 適量
  • もやし: 適量
  • 天かす: 適量
  • 豚バラスライス: 適量
  • 卵: 1個
  • お好み焼きソース: 適量
  • マヨネーズ: 適量
  • かつおぶし: 適量
  • あおのり: 適量
  • ねぎ: 適量

あるといい

  • 焼きそばにつかうそば または 焼うどんに使ううどん: 1玉
  • さくらえび: 適量
  • その他、お好みの具材。イカとかいいですよ。

適当すぎるか? でも関西風お好み焼きもこんなもんだろ!

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材料のみなさん


つくろう

動画も作りました! :

youtu.be

 

1. 小麦粉とだしのもとと水(適量)を混ぜて液状にしておく。ここにさくらえびを入れておくと風味がとてもよくなる。

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KOMUGIKO

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「さらさらしている」と言える状態になりさえすれば分量とか気にしなくていい。


2. キャベツを千切りにする。1/6玉くらいかなあ。

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千切りが余ったら別の料理に使って。

3. フライパンBを熱して油を適量に加え、うどんなりそばなりを暖めてほぐす。

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ほぐれたら火を消しておく。

4. フライパンAを熱して油を適量に加え、準備1の小麦粉液を広げる。火を弱火にする。

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フライパン全体よりも一回り小さく広げるとよい


5. クレープ状になった小麦粉液の上にキャベツを乗せる

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うずたかく盛ろう

6. その上にもやしを乗せる

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caうずたかく盛ろう。蒸したら沈むから。


7. その上に天かすを振りかける

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この天かすがあるかないかで味がだいぶ変わる。あった方がいい。

8. その上に豚バラを被せる。

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接着剤としての役割もあるので満遍なく。

9. 2,3分待つ。フライ返しを小麦粉液の下に差し込んで、抵抗なく剥がれる感触があったらOK。

 

10. どうにかこうにかひっくり返す。

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ソォイ!


11. フライパンにふたをして、できる限り火を小さくして10分ほど放置する。蒸すのだ。

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ここはとても重要。広島風お好み焼きは、焼く料理ではなく、蒸す料理なのだ。

12. 10分経った。だいぶカサが減ったな。

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これでいいのだ。

13. フライ返しを豚バラの下に差し込んで、フライパンBの麺の上に移動させる。

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ソォイ\


13. 空いたフライパンAに卵を落としていい感じに広げる。

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ちょっと汚くなった。


14. フライパンAの上に、フライパンBの内容物を移動させる。

15. お好み焼きソースとマヨネーズをかける。

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写真うつりを気にして量を控えめにしたけど、ソースはもっとだぶだぶに掛けた方が美味い。

16. かつおぶし、あおのりをぶちかける。

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かつおぶしを掛け過ぎると味の半分くらいを持っていかれるので気を付ける。 できた。

17. ねぎもいっとこう

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おっと、ねぎも重要な要素である

このままスタンディングで食べてもいいし、皿に移してもいい。
これはかなり広島風お好み焼きだ、ぜひ作ってみてほしい。
ソースは、プライベートブランドの安いやつじゃなくて、
オタフクソースというソースを使ってほしい。たぶんスーパーにある。


島風お好み焼き豆知識

  • 県内では別に広島風お好み焼きと関西風お好み焼きを区別せずに、どちらも単に「お好み焼き」と呼ぶ(たぶん)。しかし、広島風お好み焼きを"広島焼き"と呼ぶと広島県人はキレる。キレる理由は私も未だによくわからない。
  • そう言いつつ、家庭でお好み焼きを作るときは普通に関西風だったりする(うちだけかも)。
  • 広島では、広島風お好み焼きのデリバリー・システムが完備されている。そばの出前と同じようなものだ。気の乗らない昼ご飯なんかは、地元のお好み焼き屋に電話してお好み焼きを配達してもらう。
  • 岡山の日生という地域では牡蠣をお好み焼きに入れたカキオコというプロダクトを提供しているらしい。リンク。食べたい。

エコカイロと幼き心の驚愕

デイリーポータルZ が好きで、だいたい毎日、更新分を追っている。
やる気の出ない夜はバックナンバーをあさってつらつら読む。

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ところで、幼いころに不思議な体験をした。

ある晩、親父から、土産としてあるブツを手渡された。
厚めのパックの中にどろっとした透明な液体が入っている。謎の金属片も入っている。
手のひらに収まるくらいの大きさ。恐竜の形だったような。

繰り返し使えるカイロだと言う。
「湯で温めればしばらく温かくて、しかも何回でも使える」と。
まあ確かに、湯で温めればしばらく温かい。しかし金属片が謎。

カイロを湯に漬けては、そう長持ちするわけでもない温かさを楽しんでいたが、
ある日、このブツを揉み揉みしていたら、急に液体が固まり始めた。

ビビった。液体が白く固まっていく様子を恐怖とともに眺めた。
そのあとどうしたかは忘れた。ヘタなことをしたことを隠すべく、捨てたような気がする。

なんでもない日常において、液体がいきなり固まり始めるというのは明らかに常識はずれなことで,
俺は何か世界の裏側を見てしまったのではないかと真剣に思い悩んだ。

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そうしてこれである:

エコカイロを爆竹で反応させる
https://backnumber.dailyportalz.jp/2010/04/22/a/

なんだってんだ、それが正しい使い方だったのかよ。
液体が固まるに従い温まった、という記憶はない。
むしろ、この記事を読むまで、凍ったのだと思っていた。

親父が正しい使い方を知っていれば、間違いなく披露していただろうから、
彼もよく知らないままどこかから貰ってきたものだったのだろう。

この記事を読んで、からくりを理解した瞬間に大笑いしてしまった。

【肉祭り】ネットで1万円ぶんの肉を買う

先日、誕生日だったので肉を1万円ぶん買うことにした。

 

ここで買った。インターネット肉屋:

www.themeatguy.jp

 

買った品:

 

来た:

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肉1万円ぶん

さて、調理しよう。ここからは飯テロだ。

 

■ステーキ

ステーキを焼くときの絶対にして唯一の約束は、肉を常温にすることだろう。
解凍が済んでないまま焼くとかもってのほかである。
取説には「冷蔵庫に1日置けば解凍できる」と書いてあったけど、2日かかってキィィッ!!ってなった。

そして取り出しましたるは牛リブロース270g。
見てこの厚さ:

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厚みよ

焼いた:

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ちょいレアに過ぎたか。

美味い。オレ ニク クッテル感が半端ない。

ステーキお試しセットについてきたシーズニングを振ったが、
がりがりしてあまり美味しくなかった。挽いて使うものだったのかも知れない。

 

おっと、まだ3枚もステーキ肉があるの。なに? 今週はお祭り?

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醤油と酒でタレつくった

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おろしポン酢とねぎかけた

あと1枚は撮り忘れた。ステーキっていいですよね。


■ラムスペアリブ

羊肉が好きだ。他のどの肉よりも好きかも知れない。
あの独特の匂いがたまらない。前世は遊牧民だったのかも知れない。

美しい:

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ラムスペアリブ断面

魚焼きグリルでじっくり行こうじゃないか:

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オーブンという高度利器はうちにはない。

つついてたら破れたのでフライパンに移す:

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誰もお前を愛さない。

フライパンでぜんぜん大丈夫だった:

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台所は羊の匂いだけがする。

シンプルに塩コショウだけだ。
右のサルサソースっぽいものはマズかったので後日適当にスープにした。

よい。さすがのニュージーランド産、実に羊臭い。
こんなに羊臭が強いラムは初めて食べた。それがよい。
翌日、なんとなく体臭が羊臭かった。

 

スペアリブの半分が残っている。今度は味を付けてみよう。
サルサソースは失敗したが、トマトとの組み合わせはよさそうだ。
トマトと玉ねぎとクミンを上手いことやって、こうだ:

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羊スペアリブのトマト煮乗せ - 色の褪せた乾燥バジルを添えて:

これもよい。思ったとおりに合う。タバスコかけても美味かった。 

 

■テールスープ

なんとなく、ずっと前からテールスープを作ってみたかった。
でも牛の尻尾はスーパーには売られていない。ついに夢が叶った。

シンプルにテールのみ:

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テールスープ前

3時間煮て、一晩寝かせて、3時間煮た。
この白濁感よ:

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テールスープ後

塩コショウだけでめっちゃ美味かった。
焼き肉屋で飲むテールスープの倍くらい濃い。
テールに残った身も、肉多めのすじ肉のようで美味い。

ただ、お椀4杯ぶんくらいしか残らなかったのでコスパは良くない

 
■豚の角煮

これはまあふつうの角煮。角煮丼って男の子だよね。

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2週間くらいかけて堪能した。肉1万円ぶんってのはいいですよ。

完全論破された思い出とその教訓

大学生の頃、友人Hの部屋で飲んでいた。

経緯は忘れたけど、
「卵はタンパク質が豊富な食材であると聞く。
 タンパク質が多く含まれるのは、黄身か白身か」
という話になった。

私は、白身のはずだと主張した。
ボディビルダーの日常を紹介するテレビ番組で、
彼らが食べる食事のメニューが紹介されていた。
メニューの1つとして、5,6個分のゆで卵の白身
含まれているのを思い出したからだ。

Hは、黄身のはずだと主張した。
タンパク質は生体を構成する主要な物質だ。
単なるクッション材に過ぎない白身に入っていても仕方ないだろう。
雛の元である黄身に含まれているはずだ。

Hの主張を聞いた瞬間に負けを認めた。

いま思うと、私の主張は間抜けに過ぎる。
この逸話は、以下の教訓をともなって今でも時折思い出す。
 観察・直感から見出した"それっぽい"関係を重視してはいけない。
 論理的・科学的な裏付けを求めよ。

でもなんでボディビルダー白身食うんだろ。
これは記憶違いではないと思うのだが…。低カロリーで腹が膨れるから?