卒業の危機と「アイヌの文学史」メモ

今週のお題「人生最大のピンチ」

まとめ

大学を卒業するための単位は揃ってるだろと余裕をこいてたら、足りてなかった。なんとか取れる講義を探したら見つかって難を逃れた。受けた授業のメモが残っていたのでついでにさらす。アイヌ文化おもしろい。

最初に

大学4年生の2月ごろに、卒業のために必要な単位が0.5たりていないことに気付いた。

大学のパソコン室で履修システムをながめていて、あれ、これなんかおかしいな? と思い、改めてしっかり確認したら、単位が0.5たりていなかった。血の気が引いた。

さして真面目な学生生活を送っていなくて、必要な単位をぴったりで修めようとしていた。そういう計算はする。だが計算ミスもする。何回見ても、卒論で入る単位を含めても、0.5たりていない。

ちょっと待て、待て待てマジで待て。いまから受けられる通常授業はない。残る選択肢は集中授業しかない。1,2日で完結する授業だ。集中授業に関する情報は学生掲示板にメモくらいの紙で貼られている。掲示板には、ただのお知らせ・通常授業の休講情報・アルバイトの募集・学生が作ったポスターなど、雑多に貼り付けられていて、集中授業の情報もその中に掲載されている。今から履修登録が間に合う集中授業を必死で探した。マジで掲示板の端から端まで見た。奇跡的に1件だけ見つかった。大学の履修で2月なんてほぼ締め日に近いのだ。

掲示板の写真はなかったので控え室の写真

授業は、文学部の「アイヌ文学史」だった。正直、あんま興味ねえなと思ったけど何も文句は言えない。

2013/02/09,10の土日にこの授業を受けた。楽しかった。

以下、当時のメモを記す。

 

アイヌ文学史」メモ

2013/02/09,10
人文 集中授業「アイヌ文学史
北大のアイヌ研究所 北原次郎太 先生

講師は,まるまるに太っていて,口ひげすごくて,私のイメージ上のアイヌっぽい人だった……と思ったらなんとまあ,彼自身アイヌなんだとか。

アイヌ語と,アイヌの文学についての授業。オーガナイザーの先生が最初に言った,「日本という国は単一民族国家だと思われがちですが,そうではない。アイヌ琉球の人たちがいる」というのは言われてみるとそうなんだが、ちょっとした衝撃だった。

でまあ,グローバルに活躍できる人材となるためには自国家のことを知らねばいけまい,という論理でアイヌの授業やってるそうだ。

アイヌ語

アイヌ語というのは,実は初めて聴いたかも知れない。本州の言葉とは全く違うんだな。最初は,ロシア語っぽい印象を受けた。

  • アイヌ語の系統は未だわかっていないそうだ!! 日本語に似ているところもあるのだが,異なるところの方が多い。
  • 日本語に似ているのは語順。SVOではなく,SOVが基本。これは朝鮮語にも共通する。
  • 似ていないのは,「接頭辞を多用すること」「語の頭にrを付く単語を持つこと(日本語朝鮮語では嫌われる)」。異なる言語を比べる際には,よく,体の一部をさす単語の比較が行なわれる。「それが全然似てない」。
  • アイヌは文字を持たない。ローマ字やカタカナを使って表音的に表記する。なんだか……,英語にルビを振るのとは違う,文字を持たない言語にカナをあてるというのは,不思議な気持ちだ。
  • そう,アイヌは文字を持たなかった。しかし,まわりの国との交易をする上で文字そのものの存在は知っていた。(交易のために(相手国の)文字を扱う職業的専門人もいた)
    それでもアイヌが文字を持とうとしなかったのはいくつかの理由がある:
    1. 中央集権社会ではなく,税を集めるだとか戸籍をつくるだとか,そういうことをやってなかったから。
    2. 多くのことを知っている(覚えている)というのが尊ばれる文化。
    3. まわりの国,たとえば本州の人間も,どうやらアイヌに文字を教えないようにしていたらしい。
    4. ローマ字やカタカナを使ってアイヌ語を表記するときの正式なやり方(正書法)は決まってなくて,学者間で微妙に違う。

アイヌ語の簡単な文法も習った。けっこう複雑だな……。動詞の変化がむずい。主格と目的格によって動詞に様々な接頭辞・接尾辞がつく。この接辞をローマ字で表すときには「=」という記号を使うから,文字をパッと見ると,なんだか不思議な気持ちになる。単数・複数で単語の形が変わるものもある。

 

コネタ

  • 標準語というものは作られるもの。日本の標準語は,明治に政府の意向で作られた。「日本人」という意識を形成するための一環だとか。いまの標準語は,元々は山の手地域の方言なんだって。確かに……,標準語が必要となるのは,いくつかの民族を束ねた「国」という単位を形成するときだもんな。
  • 隣り合う国で言語が違う場合,単語を借り合うことがある。「借用語」と呼ぶ。たとえば,日本語からアイヌ語になった言葉はたくさんあって,火打ち石の「火打ち」をアイヌは「ピウチ」と呼ぶ。「鉢」をアイヌは「パッチ」と呼ぶ。逆もたくさんあって,アイヌ語から日本語になった言葉には,「ラッコ」なんかそのまま来ている。アイヌの「トゥナハカイ」は「トナカイ」だ。ししゃもを漢字で書くと「柳葉魚」。あー,そう言われたら見た目そうかも,というわけではないようだ。「ししゃも」は元々はアイヌ語の「susuham シュシャモ」。susuが柳で,hamが葉。アイヌ語のsusuhamの由来はアイヌの神話にある。だから,柳葉魚という表記は,まあ見た目がそうだから,と言えばそうなんだが,輸入する前の意味を適切に汲み取った表記なのだ。
  • 儀礼における言葉遣いが日常会話で使うものとは別物,というのはアイヌにもある。どの民族でもそうなのかな?
  • アイヌ女性は刺青を入れる。それはイニシエーションとしての役割もあるのだが,ファッションという意味もあったはずだ,と。いまの日本だと刺青は悪いものという意識があるけどそういう習慣を置いてみると,刺青って美しいと思うと担当講師。ハワイは伝統的に刺青を入れる文化があって(いまは欧米のタトゥーに取って変わられているが),ほとんどの人は掘っている。それに見慣れてくるにしたがって,単純に美しいと思うようになった,と。他文化のことを考えるには,その文化の背景を知るのも必要だが,「見慣れる」ってのが大事なのね。そのうえで,美しいと思ったものは美しいと受け入れるのだよ。
  • 沈黙交易: 直接的なコミュニケーションを取ることなく行なわれる交易。やはり,異なる文化を持つ,あるいはそもそも言語が通じない集団同士が交易をするのは危険を伴う。でも相手の物品は欲しい。そういうときは,交易を持ちかける集団が,まず相手の集団から離れたところにトレードしたい物品をどんと置く。で,持ちかける方は相手からぎりぎり見えるとこくらいまで下がる。持ちかけられた集団はその物品を見に行く。トレードしたい場合は,それに見合うと思われる物品を横にどんと置く。そして下がる。持ちかける方は,置かれた物品がトレードに見合うと判定したらそれを持って帰る。見合わないと判定したら,自分たちの分を持って帰る。確かに,いっさいの言葉を交わすことなく・接触することなく,これで交易できる。
  • 神話ってのはすげえよな。「古代人にとっての,理性の限界の先を説明するもの」だ。科学を持たない人々の世界の理解の方法なのだ。科学万能主義の私としては,世界の理解の方法は1種類あればいいと思う。これこそが,個人個人が「正しい」と判定するかどうかは関係なく,世界としては正しいのだ,と。しかし同時に,その人が「正しい」と思うことがその人にとっては正しいのだ,と思う気持ちもあるし,科学を持たない人々がそれを正しいと考えていたことはゆるぎない事実,と思う気持ちもある。
  • 自分の文化は他の文化に対して優れていると思ってはいけない,という原理を持っている人がいたとする。その人はまた,論理的であるものは論理的でないものよりも優れている,という原理をも持っていたとする。
    さて,彼が訪れた民族の文化は必ずしも論理的であるとはいえない風習が数多くあった。科学という文化を信奉する彼が取りうる選択は2つ:
     ・第一の原理を廃する: やっぱこいつらダメだ。
     ・第二の原理を廃する: 論理性以外の基準でこの民族の文化を見つめる必要がある。
  • アイヌでは名付けは5,6歳になってから行なう。性格とか,それまでに起こった出来事に由来する名をつける。名前は非常に大事なものとされて,積極的に名乗ることは少なく,他人も公式なあだ名で呼ぶ。赤ん坊は小さいうちはteynesi(湿ったクソ),あるていど大きくなったらsiontak(クソ・発酵した・塊)と呼ぶ。
    これは,わざと汚い言葉を使うことで,悪い神を遠ざけようとするため,また良い神もかわいい子を持っていこうとするので,その神を遠ざけるためでもある。
    ひでえ呼び名wと思ったが,(神さま遠ざけるとかそういう背景はないだろうけど)本州でも小さい子のことをチビとか言うもんな。……いや,チビは小さい子に使うだけで蔑称ではないか? まあ,そうだとしたら,「洟垂れ小僧」とか。
  • なんと,アイヌは農耕もやっていた!!! これは結構な衝撃だった。ヒエ・アワ・キビ・カブラダイコン・タバコなんかを作っていた。アイヌが紹介されたときは狩猟採集の方が珍しくてスポットあたりまくってただけで,農耕も普通にやってたのよと。

当時のメモここまで。

いま改めて読むと、ゴールデンカムイで知ったことと重複してる知識が多いなと思った。授業もよかったが、ゴールデンカムイもすごい。

というわけでなんとかこの授業で0.5単位を得て、期限ぎりぎりで単位がそろったのでした。0.5単位不足で留年とか冗談ではないので本当に助かった。

修士にあがってから必修授業を落として留年したのは別のお話。

引っ越す際には手荷物としてトイレットペーパー1ロールを持っていこう

先週のお題「引っ越し」

今週のお題用に書いていたが、気付いたらお題が移っていた

はじめに/結論

思えば私は何度も引っ越ししている: 広島→茨城→新潟→東京→新潟→広島→北海道→広島→ニュージーランド→広島

この経験上で、新生活を始める人に伝えたいことは「トイレットペーパーを1ロールだけでも手荷物に入れておくのがいい」ということだ。

詳細

引っ越しの準備を完全に整え、次の住居に移る手続きもすべて済ませているとする。

あなたは、きっと、新居の不動産屋から住居の鍵を受け取り、クリーニングされた部屋に入るだろう。各種のインフラの手続きも滞りなく終わっていて、電気・ガス・水道、どれもつつがなく使用できることを確認する。

あとは、荷物の手配を頼んだ引っ越し業者を待つだけだ。待つだけであればスマホでネトフリでも見ていれば時間は過ぎる。

ここであなたは便意に襲われる。しかし、考えてみると、トイレは流れるけど紙がない。

いまどきコンビニでもトイレットペーパーは買えるが、外に出ているあいだに引っ越し業者が来てしまうかも知れない。というかまだ土地勘がぜんぜんないから、最寄りのコンビニがどこにあるのかも把握できていない。

こういう困ったことになりうるから、「トイレットペーパーを1ロールだけでも手荷物に入れておくのがいい」と言いたい。

「いや、そんな頻繁にうんちしないけど」という人はそれでいい。これは、1日に数回以上便意を催すお腹弱い民の私みたいな人へ伝える大切なメッセージなのだ。

5. 私とラム肉 - シャンクのトマト煮、チョップのロースト、ラックのロースト

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ボス戦

前回

32歳の誕生祭

去る2021/12/13、私は32歳となった。改めて考えてみると32年も生きてるのか……。実家暮らしの現無職という世間体からいったん目を逸らせば、めでたいことである。
というわけで、インターネット肉屋で買ったラム肉を調理して、めでたい日の晩餐とした。

ラムのシャンクのトマト煮

前々回 で部位解説したとおり、シャンクとはスネのことである。前脚のスネと後ろ脚のスネがあるが、後ろ脚にはふくらはぎにあたる肉がたっぷりついていて、こっちの方が食いでがある。

こちらが後ろ脚のスネ肉となります:

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大きいですね。重さとしては片方で約400g、高さとしては14cmくらいでした:

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↑ のような置き方をすると座りがいいのですが、実際には、

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こういう感じです。写真の上側の方にモモがくっついてたわけです。なお、シャンクよりも下(脚側)の、蹄などを含んだ不可食部位をknuckleと呼びます。

さて、シャンクはじっくり煮込む料理に向いている部位ですので、その方向でやっていきます。レシピはこちらを借りました:

kitchenofworld.com

ただし、レシピから見てもかなり薄味そうなので、コンソメキューブとか塩コショウとかを適宜に加えました。あと、なんとなく赤ワインとか入れた。

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左: シャンクに焼き目を付ける。右: 野菜を炒める。

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本当は鍋でやりたかったけど、この2本が入る鍋が実家にはなかった。

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トマ缶×2とローズマリーを加えてひたすら煮込む。

ときおり水をつぎ足しながら、3,4時間くらいで仕上がりました。

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そそりたつ骨。

家族4人で食べたのであんまり取り分がなかったのですが、やはり、食感としては繊維質だけど、しかしじっくり煮込んでいるためほろりと崩れる。また腱の部分なんかが溶けてぱさぱさした感じではない。トマトソースの濃さでラム味は薄めでしたが、十分おいしい料理でした。

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1本は、実家を出ている妹がケーキを持ってきてくれたので、土産として持たせました。

ニュージーランドで失敗した調理を今度は成功させることができて精神的にも満足しました。

ちなみに、残ったトマソは翌日の昼にスパゲッティと和えて食べました。

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ラムとローズマリーの香るいいスパゲティでした。

チョップのロースト

待望のチョップ。部位解説の通り、この肉は背肉(ロース)であり、この骨はあばら骨です。

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1本だいたい50gで、セールで1,490円だった。冷静に考えるとそう安くはない。

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オシャンに盛り付けてみたけど皿の実家感に負ける。

レシピはこちらを借りました:

www.sapporobeer.jp

なお、"ハーブミックス"については、お肉を買った際に"ラム・ラブ スパイス"という小袋が付属されていたのでそれを使いました。

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(小)って書いてあるけど1割くらいしか使わなかった。どう始末しよう。

レシピ通り、塩・胡椒とハーブミックスを振り、パン粉を載せて、オリーブオイルを垂らしました:

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そしてこれを魚焼きグリルで焼きました。ついでに、じゃがバターとプチトマトも焼いた:

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アルミホイルを使っているので魚焼きグリルもさほど汚れず、いい感じに焼き目も付いてくれました。

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念願であった、「チョップの骨を手で持って肉部分を食らう」という行為ができて私はとても満足です。10分ちょっと焼いたくらいでいい感じに火が入り、まったく硬くない柔らかな肉質でした。それに対してパン粉のさくっとした食感がなかなかイケていて、もう2,3本食べたかった。

ラックのロースト

個人的な大ボスです。これを扱ってみたかった、食べてみたかった。

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約750gでした。お値段は4,290円。いいんだ、体験はプライスレスなんだ。
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観察する。1枚目: おもてから見たラック。2枚目: 裏から見たラック。3枚目: 横から見たラック。

これを切り分けてしまえば上のチョップになるわけですが、やはり塊の肉というのはそれだけでテンションが上がります。

さて、こちらはオーブンレンジでローストします。レシピはこちらを借りました:

recipe.rakuten.co.jp

レシピ通り、オリーブオイルを塗って、塩・胡椒をして、ついでにハーブミックスをいくらか振り、そののち粒マスタードを塗って、みじん切りにしたニンニクを埋めました。余っても使い道がないのでローズマリーも載せておいた。

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レシピに従うと、220℃に予熱したオーブンで15分ってことでしたが、うちのオーブンレンジは非力なのか、追加で15分、計30分くらいでミディアムレアというとこに落ち着きました:

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焼かれよ。

焼かれた:

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左: 脂身部分が自然とのけ反った。右: oh, いい色。

けっこうたっぷりと粒マスタード塗ってニンニクも埋めたつもりでしたが、倍くらい載せてもよかった。というか、それらを塗った脂身部分が焼くと身と離れてしまって、実食の際に一緒に口にできなかったのはちょっとミス。でも、(ラム臭は薄めだったけど)肉としてはとても美味しかったです。チョップと同じで柔らかく上質な赤身でした。あと、アバラとアバラのあいだに包丁を入れて切り分けるとき、異様に興奮しました。気軽に買える値段ではないけど、これはいつかまた食べたいな……。

いったん満足した

ニュージーランドの頃と合わせて、ショルダー・ミドル・レッグのラム三大部位を食べることができました。ひとまず満足。しかし、やはり俺はラムが好きだなという認識が深まりました。

残念ながら、最初 にスーパーに出した嘆願書には反応がもらえないままですが、じわじわとラム肉は広まりつつあるような印象があるので、そのうち、身近に買える肉となってくれるだろう。なってくれ。

4. 私とラム肉 - 幕間

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100円/1頭 ハンズで衝動買いした


←前回

あまりにもラム肉が手に入らないために、インターネット肉屋に発注をかけた。ラムのラックとチョップとシャンクとランプを手に入れた。

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ラックとチョップとシャンクは、もうすぐ来る私の誕生日に調理をするつもりだ。

ここでは、ランプを2種類の料理に使ったことと、サイゼリアのラム料理を食べたことを記したい。

ランプで作る、フライパンジンギスカンと生姜焼き

ランプを切る

前回  に書いたように、ランプはお尻のあたりの肉で、赤身の強い部位である。

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左: ラムランプ700g, 右: ご開帳。2つのブロックに分かれていた。

ちなみに、この2つのブロックで2,400円である。約350円/100g。ニュージーランドに居た頃の値段がなつかしい。

上から見ると脂身*1で白く見えるが、横から見ると赤身の肉であることがよくわかる。

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左: 横から見た図, 右: 切って並べた図

切ってるあいだにもうラム特有の匂いが立ってきて、ふへ……ってなった。 少なくとも私にとってはとても心地よく感じる匂いである。

フライパンジンギスカン

ざっくり言ってしまえばラム肉の野菜炒めである。ジンギスカンを名乗っていいのか全く自信が持てない。作り方はとても簡単で、まずはネットからタレのレシピを借りる。この人のものが今のところ最も好き。

cookpad.com

タレを作ったら、肉と野菜を用意して炒めて、最後にタレで混ぜ合わせる感じだ。

こういうやり方でラム肉を楽しんでいる人が居るんだと知って心安らかである。スケラッコさんは個人的にもファンである。

to-ti.in

 

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材料を用意し、

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ラムを炒めたのちにキャベツと玉ねぎを追加する

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もやしは最後

このあとタレをかけて、ざざっと炒めて完成なのですが、完成品の写真を撮るのをすっかり忘れていました。

この肉はラムであるとは告げずに晩飯に出したのですが、おとんもおかんも特に抵抗なく食べていました。このラムの臭みが少ないおかげなのか、タレが日本人向けに調整され過ぎているのか、両親が食に興味がないのか、そのあたりの分析はできていません。個人的にはこのタレの配合はとてもいいと思っていますし、野菜もたっぷり食べれて、よいレシピだと思っています。

 

ラムランプの生姜焼き

ランプの塊は2パックに別れていたので、もう1つは生姜焼きにした。ラムの生姜焼きについては、ジンギスカンのジンくん のレシピを借りた:

aussielamb.jp

 

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かなりラム味(み)が抑えられ、よく言えば万人受けする味で、普通に言えばちょっとだけラム風味の生姜焼きだった。これはこれで美味しかったです。

 

サイゼリヤで頼むラム料理

私が住む広島には市街地にしかサイゼリヤがないのだけど、たまたま街の方に出る用事があったのでサイゼに入った。

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イゼリヤ

無論、目的は、アロスティチーニラムときのこのきこり風ラムのラグーソース(トロフィエ)である。でも知っていた。ちょうど数日前のグランドメニューの更新できこり風が消えていたことを……。ちょっと遅かった……。

でも念願であったアロスティチーニとトロフィエを食べることができた!

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アロスティチーニ!

美味かった。まぎれもなく美味いラム肉だった。適度に脂身と弾力のある肉で食べ応えがある。単体でも十分に美味いが、"やみつきスパイス"との相性もとてもいい。よかった……。サイゼリヤ、うちの近くにも出店してほしい。

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トロフィエ!

美味かった。ただ、ラム味はそれほど強くは感じなかった。粗挽きのひき肉のソースをチーズと食べるパスタとしてはとても美味しいと思った。アロスティチーニの残りのスパイスをかけても美味しかった。パスタの一種をスプーンで食べるということと、それでぜんぜん違和感なく食べられるのも1つの発見だった。

 

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労働のあとの昼飯なのでワインを飲んでもよいものとする

アロスティチーニが本当にラムラムしたラム肉だったので嬉しかった。僕はこういうものを求めていたのだ。

続いては、シャンクとチョップとラックの調理に移る。

次回

*1:ラム豆知識: この脂身を英語ではcapと呼ぶ

"Silent Tactics" というカードゲームを手に入れた

今週のお題「最近あったちょっといいこと」

顛末

"Silent Tactics"。カードゲームというか、ボードゲームというか、3人対戦の陣取り合戦みたいなゲームだ。

知名度はほぼない。なぜならば、元はオンライン上の期間限定(2007年の12月のみ!)のネットゲームだからだ。当時ドハマリした。期間限定だったので、もうネット上でプレイすることはできない。サイト自体が消えている。

私が投稿したものではないが、奇跡的にニコニコにプレイ動画があった:

www.nicovideo.jp

2007年にしてはシャレオツなUIだったと思う。

それで、このゲームのアナログバージョンのオリジナルグッズが参加者に抽選でプレゼントされた。全部で100セットくらいじゃなかったかな…、参加人数に対して数はかなり少なかったと思う。あえなくその抽選には外れて、そしてそのままこのゲームのこともすっかり忘れていたのだけど、最近、ふと「なんか面白いゲームあったよな」と思い出した。もう一回やりたい。

使う道具はシンプルだから、ちょっと頑張れば自作もできそうな気がする。詳細なルールが若干おぼろげだが、たぶん誰かネットで書き残してくれてるだろうし、とりあえず調べてみるかと思ったら、そのアナログ版が!メルカリに!売られてた!買った!!最近あったちょっといいこと!!

なんだかちょっと青春を取り戻したような嬉しさがある。届いてプレイしたらまた感想を書こうと思っています。

改めて思い出しつつネットを探してみると、思っていた以上に狂った企画だった

かつて、ワールド通商という企業が、「求ム、天才」をキャッチフレーズとして、高難易度のブラウザゲームを公開していた。
asciiの紹介記事:

ascii.jp

2007年の7月から12月末までの企画であり、そのゲームページはもうクローズしている。ワールド通商のサイトを検索してみても、もうこの企画に関する情報も一切出てこない。

ゲームはおおむね月1で別のものに切り替わり、それぞれ、クリアした人の中から抽選でかなり高級なブランドの腕時計がプレゼントされるという企画だった。

5種のゲームは、

  1. "Escape From the Time" ... 謎解き要素ありのイライラ棒
  2. "Phantom" ... 高速で画像が切り替わる間違い探し
  3. "Mirror of the Mind" ... (これはプレイしてない)数式パズルっぽい。
  4. "Token of Love" ... (これもプレイしてない)そしてこれはちょっと調べても情報が出て来なかった。どんなゲームだったのだろう。
  5. "Silent Tactics" ... 3人対戦陣取りカードゲーム

この5番目のゲームにドハマリしたわけである。2007年12月なので当時の私は高3である。受験勉強しろ。

3. 私とラム肉 - 推し肉の部位について力の限り語りつくしたい -

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ラムレッグのロースト

← 前回

はじめに

もろもろあって、北海道での農作業ののち、ニュージーランドにワーキングホリデーで渡航しました。2019年の10月から2020年2月まで。渡航前までは農作業をする予定だったのですが、なんのかんので、主にラム肉と牛肉を生産する AFFCO(アフコ)という精肉加工会社のWairoa工場で働くことになりました。

ここです:

 

「工場内の写真を撮んなよ。ましてやSNSにあげたりするなよ」と契約時に忠告されましたが、まあ休憩室での自撮りくらいならいいだろ。

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当時の俺。どうしてそんなに悲しい目をしているの?
ヘッドマフはおしゃれじゃなくて、工場内の騒音対策として配布されたもの。

精肉加工工場で働くと、どうしたって肉の部位について詳しくなる。

ここでは、

  1. 私の経験と料理の写真
  2. AFFCOの商品カタログのページ
  3. MLA(MEAL & LIVESTOCK AUSRRALIA)の日本法人 が公開している情報

  4. www.megahouse.co.jp

以上を用いつつ、ラムを推す者として、ラムが日本に出回る一助となるべく、ラムの部位について私の知る限りのことを書いていきたい。

 

悲しい前置き: ニュージーランドにおける生活自体の思い出は、基本的に、僕にとっては苦痛の方が大きい。未だにあまり思い出したくない。だから、日常的な生活のこととか、ニュージーランドの文化・風習・観光地なんかの話はこの後いっさい出て来ない(もしも気になるのであれば、私のFacebookの投稿をたどってほしい。いくらかは書いている)。だからラムのことだけ書く。当時、偏愛的と言えるほどラムについて調べたのも、いま思えば、現実逃避の意味合いが強かったのかも知れない。

 

というか「一頭買い!!ジンギスカンパズル」ってなんだよ

いや、俺もよく分からん。メガハウス社 は狂っているのか? たぶん 狂っている のだろう(褒め言葉)。

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でもかわいいよ
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毛は取り外せる仕様になっている。素体もかわいい。

 

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それでこうなる

 

その他の情報リソースに関する前置き(読み飛ばし可)

読み飛ばし可ですので小さめの文字にしておきます。

肉の部位って、名称とかどこを切り取ったかとか、けっこうまちまちで、全世界統一版みたいな確定的な定義がありません。この記事では、まずは、AFFCOの商品カタログのページ を基本ソースとし、補助ソースとして、オーストラリア産食肉ハンドブック第7版」を用います。

AFFCOの商品カタログのページ、見づらいなあ……。とりあえず、左柱のLambを選ぶとラム肉製品の一覧を見ることができます。個々の商品へのリンクは設定されていないか……。勝手にスクショ撮ってここに貼るのもご法度でしょうから、どういう見た目なのか気になる場合はお手数ですが、都度、商品カタログからご確認ください。

それから、副教材として使うハンドブック、この原本を出版している組織は、AUS-MEAT という、オーストラリアの精肉加工の認証機関のようです。AFFCOのサイトにも「AUS-MEATの査定を受けてる」と書いてあります。たとえば、Wairoa工場のページ には次のように書いてある。

AFFCO Wairoa is approved for all major markets including EU, US, Middle East, China and Malaysia and is fully Halal, AUS-MEAT and BRC certified.

訳) AFFCOワイロアは、EU、米国、中東、中国、マレーシアを含むすべての主要市場で承認されており、完全にハラールAUS-MEAT、BRCの認証を受けています。

ですので、「オーストラリア産食肉ハンドブック第7版」も参照してよいものとします。

ハンドブックの左側の目次から、羊肉 > カットスペック索引 を選ぶと、ラム肉の製品定義の一覧を見ることができます。製品定義とは、 製品の正式名称・その製品はどのようにカットして得られるか・製品の写真・その製品は枝肉のどの部分にあたるか、などを指します。

ところで、このハンドブックの日本語版を公開している組織は、aussie beef の日本法人です。"aussie beef"とは、なんとなく聞いたことある あの「オージービーフ」です。オージービーフ日本法人の業界向けサイト のコンテンツの1つとして公開されているのです。

それで、これがまたよく分かんないんですけど、上のサイトでMLA(MEAT & LIVESTOCK AUSTRALIA)という名称が使われていますが、これが具体的に何を指しているのかもサイト見てもよくわからない。ともあれ、現況、MLAのサイトの右下あたりにあるバナーから「オーストラリア産食肉ハンドブック第7版」にアクセスできます。

それから、MLAが協賛している ラムバサダー というプロジェクトがあります。ラム肉の情報やレシピが日本語でまとめられていてサイトを見てても面白いですし、レシピブックとして公開しているpdfファイルも楽しいです。レシピブックは このページ  の下の方にあります。このレシピブックも、適宜、参照します。

 

まずざっくりと切り分けていこう

羊さんは屠殺場で電気ショックされて意識を失ったのち、後ろ足を吊り下げられた状態でレーンを流れていく。屠殺場の広大なレーンでは、1人1役って感じで仕事人が待ち受けていて、首を切ったり、皮を剥いだり、内臓を取り除いたりしていく。そうして、羊さんはレーンを巡っていくあいだに肉と骨だけになった姿になる。これを枝肉(carcase)と呼びます。枝肉で画像検索したらイメージが分かると思います(ややグロ注意)。

そして、枝肉は(もしかするとちょっと冷蔵・熟成されてから? これは工場で働いていても分からなかった)、レーンにぶら下がったまま、カット場へと運ばれていく。

枝肉は、(AFFCO基準では)大きく3つの部位に分割されます:

  1. ショルダー(shoulder): 肩のあたり ... 首から5本目のアバラまで
  2. ミドル(middles)*1: あばらとか腰とかのあたり ... 5本目のアバラから股の骨まで
  3. レッグ(leg): 後脚 ... 股の骨より後ろ

それぞれの部位はさらに小分けにカットされ、一部の製品は骨を取り除かれる。カットのされ方・骨を切除するか否かは、製品の定義に依る。

もちろん、枝肉以外の部位も捨てられるわけではない。それでは、個々に見ていきましょう。

 

ブレイン(脳: brain)

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初っ端で脳。さすがにラムの脳を食う機会はなかった。見る機会もなかった。ただ、AFFCOでも廃棄しているわけではなくて、一緒に働いていた同僚から聞いたところ、「これはドッグフードになったりするのよ」ということらしい。

ラムタン(舌: tongue)

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タンについては前回に書いた。なぜか、東京に住んでいたときの最寄りのスーパーにときおり売られていたのだ。タンにも部位はあるし、切り方・厚さに依ると思うけど、食感としては牛タンよりも豚タンに似ていた。それでいて味はラムっぽくて面白い食材だった。

 

シビレ(胸腺: sweetbread)

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これは現地で食べた。AFFCOには直売所があり、そこらのスーパーよりも安く(ただし、小分けとかされてない塊の)肉を手に入れることができた。シビレはややレアな品らしく、「いまシビレあるよ!」と告知されたチラシが出る感じだった。

残念ながら写真を残していない。見た目は、ひだのない白子みたいな感じで、味も、ちょっと肉っぽい白子に近かった。バターでソテーして食べたが、まあ1回食べたらもういいかなという感じだった。

 

フワ(肺: lungs)・ハツ(心臓: heart)・ハラミ(横隔膜)・レバー(肝臓: liver)・チョウ(腸)

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このあたりは一気に飛ばしていきます。というのも、どうもニュージーランドではラムの内臓を食べる文化が薄いらしく、けっこう探してみたけど店でも一切見なかったからです。直売店でも(シビレ以外は)内臓は売られていなかった。そのため、これらは現地でも食べる機会がなかった。横隔膜と腸に至ってはハンドブックの中に項目すらない。

 

トリッパ(胃: tripe)

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羊も胃が4つあるタイプの動物です。このうち、第1と第2の胃のことを指してトリッパ(あるいはトライプ)と呼ぶみたいです。前述の通り、ニュージーランドではあんまり見聞きしない単語だった。ググると分かるが、むしろイタリア料理とかで珍味として使われている部位のようです。

 

キドニー(腎臓: kidney)

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これも結局は食べてないんすけどね。「キドニーパイ」っていうと、イギリスで食べられるマズい伝統食らしい。

 

内臓の話はここまで!

申し訳ありませんでした。途中で書いたけど、ニュージーランドでは内臓を食べる文化があまりないみたいで、タンとシビレくらいしか食べたことがなく、大して書けることがありませんでした。

ここからは、内臓に対して、肉々した肉のことを書いていく。文章量も上げていく。

 

スペアリブ(spare ribs) 

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大きく分けると、ミドルの一部、あばら骨周辺の部位です。日常的によく聞くスペアリブと同じだと思って問題ないです。豚のスペアリブとか焼いても煮ても美味しいですよね。つまり、スペアリブの骨ってあばら骨なんすよ。ちょっとこう、両手で自分の乳の下あたりを押さえてみてください。だいたいそのあたりの骨付き肉がスペアリブです。

前回にも載せた写真ですが、日本に居たときに買ったラムのスペアリブの写真を再掲載します。

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左: 切り分け前。美しいですね。右: 切り分け中

右の写真の切り分けられた状態の形状は「あー!スペアリブだわ!」と思ってもらえるんじゃないでしょうか。ハンドブックに依ると、この部位は"スペアリブ"という名称で全く問題なさそうです。

 

ネック(首: neck)

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大きく分けると、ショルダーの一部、首の肉です。これもあんまりニュージーランド内では流通しているものではないのですが、偶然 手に入れる機会があったので食べることができました。

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左が生ネック。真ん中の穴が食道ですね。右が焼きネック。

首って、鶏だとせせりだし、豚だと豚トロの一部だしで、他の部位とはちょっと違う食感を期待していたのですが、「なんかちょっと固めかな」くらいで他のラム肉とあんまり変わらない印象でした。

 

かたロースとかた(shoulder)

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さあて、「かたロース」と「かた」が追加されました。このあたりから複雑になってくるぞ!

まず最初に述べねばならぬことは、ロースという分類は日本でしか用いられない名称である ということです。日本における「ロース」は背肉を指します。背肉とは、背骨より上(上というか、背側というか)の肉です。ちょっと背中をさわってみてください。触れた筋肉はロースです。肩から尻あたりまでの背肉はぜんぶロースです。ただし、背肉も場所場所で硬さとかサシの入り具合が変わってくるので、ロースにも区分があるという感じです。

じゃあ肩ロースは英語でなんというのよ、ということになるので、ハンドブックを確認すると、アイ オブ ショルダー(eye of shoulder)がそれらしい感じです。

ちなみに、食肉については"eye"は、目ではなく、「細長い部位の肉の一部」と思ってOKだと思います。動物の長い筋肉って平たい楕円みたいなイメージじゃないですか。それをカットした断面が目の形っぽいから、そう呼んでいる。僕はそう理解しています

ソースを出そうと思って主要な英語辞書のいくつかで"eye"と調べたけど、肉に関する用語としてのeyeが見つからなかった。

なので、野良ソースで申し訳ないが、これ とか:

When the term “Eye” is used to refer to a cut of meat or in the name of a cut of meat, it does not mean the ocular eyes with which we see.
It does not always even refer to a more tender cut of meat. It purely refers to the oval shape of that portion of the cut.

The term refers to slices of a long tubular muscle that runs length wise inside a larger cut of meat.
It is often delineated by a seam of fat and connective tissue.
Think of it as a large salami shaped muscle running nose-to-tail inside the larger cut of beef.

訳)
「目」という用語が肉の切り身、またはその名前を指すために使用される場合、それは眼を意味するわけではありません。
それは必ずしもより柔らかい肉を指すとは限りません。それは純粋にカットのその部分の楕円形を指します。

この用語は、大きな肉の切り身の内側を縦方向に走る長い管状の筋肉のスライスを指します。
それはしばしば脂肪と結合組織の継ぎ目によって描写されます。
大きなサラミの形をした筋肉が、大きな牛肉の切り身の中で鼻から尻尾まで走っていると考えてください。

 

……まあ肩ロースでいいか! ここ日本だし!

 

上のラム人形の「かたロース」「かた」に対して実物を示すと、

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こうです。ラムの人形と左右が逆でややこしいのは申し訳ない。

 

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こういう持ち方をするとイメージしやすいかも知れない。羊を前から見て、縦に両断した感じですね。

この画像の肉は スクエア カット ショルダー と呼ばれます*2。まんま名前の通り、ショルダーのあたりを四角に切りました、という商品です。これはAFFCOの直売所で買いました。2kgで$22(1,500円くらい)でした。骨が占める割合が多いとはいえ安い。

 

それでまた名前の話に戻るのですが、上の画像で「肩バラ」と書いた部位が、AFFCOのカタログでもハンドブックでも見つかりません。「骨抜いた肩」みたいな売り方をされていて、特別な名前が見つからない。

ただ、牛で言うと肩バラの部位はブリスケット(brisket)と呼びます。"lamb brisket"で検索すると、この部位を指している例もヒットします。あと、ラムバサダーが公開しているレシピブックの中でも、この部位をbrisketと書いてますね(vol 1の16ページ)。

 

……まあ肩バラでいいか! ここ日本だし!

 

さてこの骨付き塊肩肉、肩ロースと肩バラとに切り出してみました。

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ナイフと包丁でどうにかした

肩ロースはカツに、肩バラは赤ワイン煮に、残った肉やら骨やらはスープにしました。

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肩ロースのラムカツ。これがまた、ほどよくラムの香りが強まり、めちゃくちゃ美味しかった。ニュージーランドにいるあいだに食べたもので一番美味しかったかもしれない。

 

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肩バラの赤ワイン煮。これもまた、ほどよく肉の繊維がほどけ、めちゃくちゃ美味しかった。

 

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スープはあんまり印象に残ってない。骨の観察ができて楽しかった。右下の骨、肩甲骨だな。

 

背骨ごと雑に切られた肩肉なんかもスーパーに売られてて、雑に焼いて食べたりもしてました。これとか(値引きされたあとだけど)500gで$6(500円くらい)。100g100円って豚こまかよって値段ですね。

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というわけで、ここまでが「肩」の部位の話でした。

 

ラムロースとラムチョップ

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大分類としてはミドルに相当する部位と言えます。さて、これも書きたいことがたくさんある。

前述の通り、ロースとは背肉を指します。ラムについていうと、このラム人形の「ラムロース」にあたる部位は、肉単体ではなく、ラック(rack)またはチョップ(chop)という形で提供されることが多いです。

ラムのラック。耳慣れない言葉ですが、絵を見たら、「あー、見たことあるー」となると思います。

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「写真AC」よりお借りしました

こんな感じで肉塊から骨がにょいんと出ているやつ。こういうのをラックと呼びます。

や、厳密にいうと、「背肉とあばら骨を含んだ肉の塊」がラックであり、必ずしも骨がにょいんしている必要はありません。ちょっとした雑学を披露しますが、あばら骨の周りの肉だけ削いでにょいんさせることをフレンチ(french) と言います。上の写真は厳密にいえば"フレンチド ラック"です。あえてこんな感じで骨を露出することで、なんか、なんていうんでしょう、"良いもの感"が出ますよね。なんででしょうね。

精肉工場にはフレンチする専用のデカいマシーンがありました。ラックを3,4個並べて蓋を閉めてボタンを押すと、30秒くらいうぃーんと作動音がして、蓋を開けるとフレンチされたラックが並んでいる。人の業のようなものを感じながら作業してました。

 

そしてラムチョップ。何となく見聞きするし、形も何となくイメージもできますよね。こういうやつです。

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こちらも写真ACからお借りしました

チョップの説明は、ウィキペディアのもの がしっくりきた:

A meat chop is a cut of meat cut perpendicular to the spine, and usually containing a rib or riblet part of a vertebra and served as an individual portion. The most common kinds of meat chops are pork and lamb. 

訳)
チョップは、背骨に対して垂直にカットされた肉の切り身である。一般的に、脊椎から延びるあばら骨かriblet*3を含み、1枚ずつ提供される。基本的にチョップと言うときは豚かラムのものである。

つまり、ラックをあばら骨ごとに1枚ずつ切り出したものがチョップなのです。ラムチョップの肉はロースで、ラムチョップの骨はあばら骨なのです。

 

そして、ものすごく、ものすごく残念なことに、ニュージーランドにいるあいだにこの部位を食べることは叶いませんでした。なので写真も借りて来るしかなかった。

ラックは直売所でも売られてなかった。チョップはスーパーにはあったと思うんだけど、結局買わなかった。なんでだろ、高かったからだっけ。

これ書いてて悔しくなってきたしラム肉食べたいから、いまインターネット肉屋でラムのラックを注文しました。近日中に届くので次の記事として書きます。

そして、ラックとして切り取られるよりも腹側のあばら骨近辺の肉が、そうです、上ですでに書いたスペアリブです。ふだん食べている肉が動物のどの部分なのか理解できるとちょっと知的好奇心が満たされますね。

バラ(フラップ: flap)

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これも大分類としてはミドルに相当する部位です。だいたいアバラ骨より下の腹側の肉と言っていいでしょう。つまりスペアリブよりも腹側の肉。牛で言うときのカルビはこの部位です。

この部位、牛や豚なら大量に取れるのですが、なんせラムは子羊なのでぺらっぺらです。面積的にはけっこうありますが、体積的にはたいしてありません。精肉工場で見ていても、ちょっとくすんだ白色のタオル? って感じの見た目でした。

残念ながら、この部位は買う機会も食べる機会もありませんでした。

 

サーロイン(チャンプ: chump)

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これも大分類としてはミドルに相当する部位です。背中と腰あたりの肉です。

"サーロイン"という名称は英語でも用いるみたいですが、ハンドブックに従うならば、ラム肉についてはチャンプ(chump)という名称が正式なようです*4

まあ、ハンドブックも「サーロインって呼んでもいいよ!」と書いてるのでサーロインでいきましょう。

ラムのサーロイン! 二度ほど食べる機会がありました。

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サーロインのロースト

これは美味かった。ほどよい柔らかさと、ただの赤身ではないちょっとした脂感。「良い肉」「上品な肉」という感じがしました。

なので、というとアレだが、逆に印象に残ってない。とても美味しかったのは間違いないが、「これならラムじゃなくてもいい」という謎めいた思いを抱いた記憶があります。

 

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二回目のサーロインは完全自己責任でたたきにして食べてみました。ググったら、ラムも、牛と同様に生でもOKらしいと出てきたので。

……やっぱりこう、美味いのは間違いないんだけど、野趣味に欠けるというか、面白みがないというか、ラム感が低めで期待したハードルを越えることはなかった。塩をかけすぎて塩辛かった記憶の方が強い。

なお、ロース(背肉)をまるまる1本取り出したものを バックストラップ(backstrap) と呼ぶらしいです。名前がかっこいいと感じたのでついでに紹介しました。

 

ヒレ(テンダーロイン; tenderloin)

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豚や牛と同じく、いわゆる"ヒレ"です。英語では テンダーロイン と呼ぶみたいです。

これ僕が初めて知ったとき興奮したんですけど、ヒレって骨格の内側の筋肉なんですよ! あばらの内側に付いてる筋肉!あばらの内側って内臓しかないんだと思ってた!
それで、「運動するにもそんなに使う筋肉ではないので、ヒレは柔らかい」という図式が成り立つようです。

テンダーロインも1回だけ食べる機会がありました。

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たまたま入手できたラム肉バラエティセット。右から2つ目がテンダーロイン。

ローストして食べたんですけど、これもサーロインと同じで、「良い肉」「上品な肉」という感じがするゆえに印象に残っていない。日本に帰ったらもう食う機会はないんじゃないかと思いつつも、まあそれでもいいかと思ったのを覚えています。

サーロインもテンダーロインも、ラムをラムたらしめるあの乳臭さというか草っぽい匂いというか、それが控えめなんですよ。しかもどっちも柔らかくて歯ごたえに特徴がない。ラムはラムなんだけど万人受けする感じ。俺はもっとラムにはラムを感じたいんだ。

 

ランプ(rump)、イチボ(???)、モモ

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ショルダー、ミドル、とラム三大部位を見てきました。これが最後のレッグです。レッグもまた、部位の区分けの仕方がいろいろあってややこしい。

 

まずは、美味そうな写真で攻めます。

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ラムレッグのロースト!!

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よき焼き具合

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私が焼きました

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冷凍レッグを持ち帰る私。2kgくらい。直売所だと20$くらい(1,600円くらい)で買えた。スーパーだと50$くらい(4,000円くらい)。直売所すげえ。

さて、レッグの部位について見ていこう。写真が続いたので、もう一度ラム人形を示す。

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まず、ランプ(rump)は ハンドブック にも掲載されている、れっきとした部位です。サーロインから続く部分であり、ざっくり、お尻の肉と言える。

一方、「イチボ」が分からない。牛肉について言えばイチボという部位があることは知っています。いま検索したら、やはりお尻のあたりの肉であることも分かりました。

ただ、ラムに関していうと、AFFCOのカタログでも、ハンドブックでも、イチボに相当する部位が見つからない。むしろハンドブックの記載を鵜呑みにするのであれば、お尻のあたりの(寛骨; aitch bone)のことをイチボとしている。例。"ラム イチボ"で検索をかけても牛肉のイチボのことばかりヒットする。

これは完全に私見ですが、ラムにおいては、ランプとイチボの境界はかなり不明瞭ではないかと思います。イチボはランプに統合してしまってよかったんじゃないでしょうか、メガハウス社様。

それとは対照的に、「モモ」はもっと細かく分類できる。ハンドブックに依れば、

  1. トップサイド(topside)
  2. ナックル(knuckle)
  3. シルバーサイド(silverside)
  4. アウトサイド(outside)

の4種に分けられるようです。

ラムバサダーの レシピブック vol.1 12ページを参照すると、日本語で言うと、トップサイド → うちももナックル → しんたま とされている*5

ただし、AFFCOではこの小分けは行われていなかった。じゃあ、レッグまるまる手に入る環境にあるわけだし、俺が小分けしてみるか! と、2020/01/19 に挑んだ記録が残っているので紹介したい。

 

スネ(シャンク; shank

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紹介する前にもう1つ補足を。

レッグという部位は要するに後ろ脚です。このうち、人間でいうところの尻から膝までの肉が「モモ」であり、膝より下は「スネ(shank)」という扱いになります。購入したラムレッグはモモとスネで構成されていると言っていい*6

ですので、まずはモモとスネとの分離を試みました。

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どうにかこうにか切り分けました。

上の写真の左がスネで、右がモモです。

スネには、ふくらはぎにあたる部分にたっぷりと肉が付いています。じっくり煮込んだシャンクも割と"ごちそう"の類に入る料理です。

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そのごちそうを目指してスネをワイン煮にしましたが、勘で味付けしたため、ワイン過多の酸っぱい感じになってしまった。肉としては、牛のすね肉にも似て、繊維質な感じ。ただし、じっくり煮込むことで肉周りのスジがとろけるためか、パサついた感じではなかった。

あー、味付け失敗したのが悔しくなってきた。シャンクもネット肉屋で購入できたので、次回の記事でリベンジする。

 

それで、モモを4種に切り分ける話に戻るのですが、まっったく分かりませんでした。まっっったく分かりませんでした。もうちょいこう、膜で区分けられて、「おお、確かにこことここは別の筋肉なんだな」と、すいすい解剖できると思っていたのですが、まっっっったく分かりませんでした。

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この辺が……ランプですよね……?と思う私

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切り分けようとしたけど、どこを切ればいいのか、肉を見ただけでは全く分からない。

5分で諦めて、結局こいつも丸ごとローストにしました。いつかは、識者による確かな分類が行われた部位ごとの食べ比べをしてみたいものです。

 

おわりに

推し肉であるラムの部位について、私が知ることのだいたいを書けたと思います。

なにか清々しい気持ちを抱いています。ラムのことめっちゃ書けた……。「推しについて早口で語る」のってこんな感じなんだろうな……。

 

補遺としていくつかの情報を示して締めます。

 

1. ラムの枝肉を手作業でカットしていく動画

www.youtube.com

ラムの枝肉から各部位を切り分けていく動画。グロくはないです。この記事を「面白い」と思った人は、この動画も絶対面白いと思うはず。

AFFCOやハンドブックとは区分けの仕方がちょっと違うので、今回は参考文献としては用いませんでした。

 

2. 肉が届きました。

本文中で何回か、「インターネット肉屋でラムを注文した」と書きましたが、この記事を公開するまでのあいだに届いてしまいました。

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ラックとチョップとランプとシャンク

これらを調理したら、その仔細について次の記事を投稿したいと思っています。

 

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またね

次回

*1:あばら(rib)と腰(loin)で分ける方が一般的かなーと思うけど、AFFCOさんがmiddlesという用語を使ってるから従う。

*2:首と前脚をつけたままの状態だと フォアクォータ (fore-quarter)と呼ぶ。「四分割の前側」ってことですかね。直球。

*3:これは調べてみてもよくわからなかった。おそらく、背骨とあばらの間あたりの骨のことだと思う。

*4:背中から腰あたりの背肉は アイ オブ ショートロイン (eye of short loin) という部位もある。このあたりは正直、どこで切り分けるのが正解なのか私もよく分かりません。

*5:シルバーサイドは掲載されているが、対応する日本語は記載されていない(個人的には「そともも」かなと思う)。また、アウトサイドについては言及がない。ほんと、肉の部位って統一的な基準がないんだなあと思う。

*6:ちなみに、前脚のすねはフォアシャンク(foreshank)と呼び、後脚のすねはハインドシャンク(hindshank)と呼びます。フォアシャンクはあんまり食べられる部分がないので、単にシャンクというときはハインドシャンクを指します。

2. 私とラム肉 - 始点と発展 -

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ラムよ、遠きラムよ

← 前回

 

正直に言うと、私が、いつラム肉に出会い、どのような過程で好きになっていったのか、説明ができない。いつの間にか出会い、いつの間にか好きになっていた。まるで恋のようだ。

 

ラム肉との最初の出会いが思い出せない。
私は、大学進学のために広島を出たが、それよりも前にラム肉を食べたことはないとだけは断言できる。そのあとの記憶は曖昧だが、最も有力に思えるのは、2012年の初夏だ。大学の研究室時代に北海道の苫小牧の研究所に行く機会があって、そのときの振舞いバーベキューで初ラムを経験した可能性が高い。しかし特段の記憶がない。第一印象が記憶にないのだ。むしろ、そのときに姫竹も供されてそれが猛烈に美味かったこととか、なぜか研究所のガレージにビールサーバーがあったとか、同行したポスドクが巨大トラクターに乗ってはしゃいでいたことの方をよく覚えている。

 

続く記憶として、2012年の冬に北海道を旅行したときのことが挙げられる。そのときに訪れた焼き肉屋でラムを頼んだのは間違いない。美味しかった。残念ながら写真を残していない。でもこれが初体験でないとも断言できる。やはり僕はこれよりも前にラムに出会っている。

 

このあたりからラムが気になり始めた。そしてしばらくラムとの淡いつながりが生まれる。

当時、私は茨城に住んでいたのだが、カスミというスーパーでは、まれにラムのこま肉が売られていた。それまで目に入っていなかったけど、気になり始めるとラムのパックが見えるようになった。豚こまよりは少し高いけど、牛こまほど高くもない。フライパンでラムこまを焼いて野菜を炒めて、疑似的なジンギスカンのようのものを作っていた。

 

そういう日常は写真として残さないものだ。しかし、私は日々のメモを日記で残すという習慣を持っている。これまでのメモについて、ラムに関する記録をあさった。5件ヒットした。引用するが赤裸々な過去についてはここでは見逃してほしい:

2013/04/30 火
とりあえずZZを観る。だめだ,プルがかわいい。もう授業サボって全部見ようと決める。8:00くらいから酒を飲み始める。
昼頃,昨晩買ったラムが美味しかったので,再びとりせん*1。戻ってからひたすらZZ。17:00ごろ,ぜんぶ観終わった。
奨学金のネットでの申請の締め切りが迫っていたのでサテライト*2。21:00前に帰ってきて,酒飲みながらトマトソース作ってすぐ寝た。22:00くらい。

2014/12/09 火
8:00起床。よく寝たし酒も残ってないしで好調。しかしめっちゃ寒い。朝飯(モツ煮),いくらか雑務メール,豚汁作成。
焦点距離と撮像素子の大きさと画角の関係をまとめる。豚汁で昼飯にして,12:30ごろ研究室へ。日曜に洗ったフィルターをセット,試運転。
フィルターお手入れ方法をhikiに記載。Tがゼミで導出した,任意高度における沸点を復習。ゼミ準備ゼミ準備。22:00帰宅。ゼミ準備。
ラム肉とタマネギを炒めてアテに酒。ゼミ準備。まだ終わってないけど2:00閉店。最近スライド凝り過ぎですよ。3:00就寝。

2015/07/01 水
12:00起床のつもりがうっかり16:00起床。昨日作った常備菜で米を食う。シソの醤油漬け美味え。妙に眠い。19:30ごろ、暗くなってきたのでカスミへ。
昨日買えなかったいくらかの材料を購入。あと、3割引くらいだったけど寿司も買った。帰宅。寿司美味い……。酒飲みつつぼんやりネット。眠い。
何かしなきゃと思って、23:00くらいからバックアップルールの制定、バックアップの実行など。それから来週の東京行きでビジホが使えるのではと色々と検索。
寝ますかねと思ったが、肉が食いたくなったので、カスミで買った半額ラム肉を野菜とともに炒める。美味い。6:00ごろ寝ましたかね。

2015/10/23 金

- ラム肉けっこう好き。牛>=ラム>豚=鶏って感じ。

2016/02/03 水
8:00に目が覚める。しばらく布団待機。10:00起動。家事。11:00出発。修論かりかり。16:00ごろ提出。お疲れさん。ゼミ。Nさんが恵方巻きとか買ってきてくれて、
M・M・N・Kとで食べつつ雑談。20:30ごろ帰路に立つ。トライアルで買い物。帰宅してザッと酒を入れて雑務。ラム肉おいしいです。0:00ごろ寝る。

 

ラムとの淡い関係はその後もしばらく続いた。
私は2016年3月に大学院を修了し、4月に就職をした。しばらく新潟にいたが、11月に異動し、1年半ほど東京の東中野に住んでいた。マンションの目の前にマルマンストアというスーパーがあって、ここではラムの切り落としがほぼ常設で売られていた。相変わらず、野菜とたれとで炒めて疑似ジンギスカンをよく作っていた。このスーパーには、まれにラムのタンも売られていて、これも好きだった。食感は豚タンに似ていて、味はラム。ラムタンはそれ以降 食べることができていない。また食べたい。

 

このあたりで、「俺はラムが好きだ」とはっきり意識した。そう気付くのに、推定的な出会いから言えば4年かかった。

もっとちゃんとしたラムを食べてみたくなり、2018年12月、インターネット肉屋でラムのスペアリブを頼んだ。

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ラムのスペアリブ。左: かたまり、中: 切った: 右: 焼いた

 *

「ラムってどんな味なの?」と、ラム未体験者に訊かれたとしても、うまく答えられない。それは、「豚ってどんな味なの?」と、豚未体験者に訊かれれるのと同じことだ。
「……なんかこう、ミルキーというか」「……草っぽいというか」そういう曖昧なことしか言えない。好きであるがゆえに、どうして好きなのかをかえって説明できない。

 *

 

そして、時間は飛び、2019年7月。私は北海道の大樹町に居た。

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さすがの北海道である。ジンギスカン用のラム肉をいつでも入手することができた。基本的には平日は食事が提供されたが、休日は各自で食事をする必要があった。他の肉には眼もくれずにラムを食べまくった(同じくらい魚介も食べたが)。

炭火で行うバーベキューでも、肉は、タレ付けのラムだけだった。ビールとともに、狂ったように食べた。考えてみると、正式なジンギスカンって俺食べたことないなと気付いたけど、炭火で焼いたラムの美味さの前にその気持ちは掻き消えた。

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ガレージで行われるバーベキュー

 

そうして、ゆっくりと沈み込んでいくように、僕はラム肉の沼に膝くらいまではまりこんでいった。それは悪いことではない。美味いと感じる食べ物が多いことはよいことだ。北海道から戻って、そのまま何もなければ、僕はこのラム沼にこれ以上は浸かることはなく、「俺、実はラムが好きでさー。あ、ほら、ここのお店、ラムあるから頼んでみようよ」と弱うざ絡みする程度のラム好きに収まっていたかも知れない。

 

だけど、大きな転機が訪れる。ニュージーランド渡航することになったのだ。しかも、主に羊肉を扱う精肉工場で働くことになったのだ。

ここから私は変質的なほどラムにのめり込んでいく。頭まで沼に沈んでしまった。

 

→ 次回

*1:スーパーの名前

*2:大学のコンピュータ室のこと

1. 私とラム肉 -現状と展望-

 

私はラム肉が好きだ。豚・牛・鶏・その他の肉と比べても、飛びぬけて羊肉が好きだ。その理由は未だによく分からない。前世が遊牧民だったのかも知れない。

 

ところで、私はいま、広島県安佐北区という地域に住んでいる。街といえるほどではないが、田舎といえるほどでもない、市街地と山との中間あたりである。

かつて東京に住んでいたころは割とスーパーでもラム肉が売られていた。
かつて北海道に住んでいたころにはジンギスカン用の肉を気軽に買うことができた。
かつてニュージーランドに住んでいたころには憧れのラムレッグの丸焼きを作って食べることができた。

広島、特にこの微妙な田舎に戻ってきてから、ラム肉を食べる機会がとんとない。
近隣のスーパーをめぐってラム肉が販売されていないか精肉コーナーを見て回るが、ない。ほんとない。地域の精肉店に問い合わせてラム肉の取り扱いがされてないか訊ねたが、してない。市街地の方のイオンまで行けば手に入ることがわかったが、どうにも遠い、ひょいと気軽にいける距離ではない。サイゼリアでラム肉の商品が出始めた情報はもちろんキャッチしている。しかし、広島ではサイゼリアは市街地にしかない。いずれにしても遠い。通販でラム肉を入手することもできるが、やはり通販ではどうしても値が張る。そう気軽に買えるものではない。

 

ラム肉が……食べたい……。

 

そして、1つの策を採ることにした。
近隣のスーパーで最も食肉に力を入れているスーパーに、ラム肉の取り扱いを依頼するのだ。そのスーパーの名前はノムラストアーという。

 

とてもいいお店だ。生鮮食品が強い。肉・魚介・野菜、近隣のスーパーでは見られないものも多数に取り扱われていて楽しい。

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牛ほほ肉!牛胸腺!牛テール!アキレス!豚チョップ!皮付き豚ブロック!ぼんじり!

肉写真ばかり挙げたが、魚介も強い。かつての冬の時期に殻付き牡蠣が10個200円で売られていて、正気か?と疑ってしまった(おいしかった)。あと、Google Mapで口コミをつけたらすぐ反応を返してくれるのもうれしい。

 

さて、このノムラには、「ノムリン『元気BOX』」という目安箱みたいな制度がある。

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ノムリンBOX説明書

そこで、この手紙を入れることにした。

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怪文書みたいに見えてきたが、虚偽となる情報は一切ない。これをノムリンBOXに投書してみようと思う。

 

まずは、ここからだ……!!

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届け、俺の想いよ。

ちなみに、

  1. エブリイというスーパーのお問い合わせ窓口に「ラム肉取り扱って~」と依頼をしたことがあるが、特に返信はなかった。
  2. この質問したの俺です。

 

→ 次回

ファミマの麻辣花生で辣子鶏を作ろう。微妙だった!

はじめに

ファミリーマートに麻辣花生(マーラーピーナッツ)という商品が、……かつてあった:
https://www.family.co.jp/goods/snack/5020270.html
URLを残していたけど、もう売られてないらしく、リンクが切れている。

こういう商品だ:

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大切りの乾燥揚げ唐辛子とピーナッツとが花椒の香りをまとっていっしょくたになっている。かなり花椒の香りが強い。芳香剤の一種かと思うレベルである。うまい。

これを使って、中国は四川の辣子鶏(ラーズーチー)を作った。あんまり美味しくなかった。

終売した商品で微妙な出来の料理を作ったという虚無みたいな思い出をインターネットデブリとして放出する。

辣子鶏とは

鶏肉と唐辛子と花椒とかを炒めた中華料理。おいしい。

僕はかつて東京で働いていた。当時働いていたビルの中華料理屋がお昼に500円弁当を売っていて、そのラインナップに辣子鶏があってその存在を知った。辛くてオイリーで白飯もりもりで大好きだった。花椒が食べにくいのが玉に瑕。

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中華一番!小川悦司 【第1話】記憶の架け橋

唐辛子や花椒はより分けて食べるものだったのか……。ぜんぶ食べてたよ……。

麻辣花生・愛宕ビル・中華一番。
色んな記憶が混ぜ合わさり、僕は辣子鶏を作ることにした。

微妙だったよ!

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材料はこんなものだろう。

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たれに漬けたのちに鶏を炒め、

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鶏を取り出してから麻辣花生を炒め、

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最終的にこうなった。

めっちゃ美味そうなんだが、第一にピーナッツの食感が悪い。硬い。カシューナッツだったらだいぶ良くなってたと思う。花椒の香りはいいものの、唐辛子の辛味が全く鶏に移っていない。というか、見た目は凶暴なくせにこの唐辛子、直に食べても大して辛くない。いいとこ、鶏のピリ辛中華炒めだった。

もそもそっと食べ終えた。

おわりに

おいしい中華屋さんに行きたい。ちゃんとした辣子鶏たべてみたい。

酔心抜刀術 兄弟之噺

# 起

夕刻、私と酒を飲んでいた兄は、不意に黙りこみ、片の掌で口元を覆うと、四半刻ほど固まっていた。このように兄が己の世界に入るのはいつものことである。そのあいだ私は酒を進めていた。囲炉裏の火が揺れていた。

ふいに兄が意識を取り戻した。
「小三郎」
「はい」
「俺は、狭間幻鏡流の奥義を会得したかも知れん」
「はい」
毎時の戯言なので受け流す。
「出るぞ!薪でいい!薪を投げろ!」
「……はい」
兄は、業物・景虎を取り上げ庭に躍り出ると、すぐさま抜刀し、脇に構えた。私も猪口を持って付いていく。

庭へと出ると、小春の夜の折であり、いい草の匂いがした。これから育つ若草の匂い。
その気持ち良い匂いに、私は、一時、我を忘れて空を見上げた。夜空に浮かぶ月は満ちている。空は遥かに澄んでおり、明日は晴れではないかと思われた。

目を戻すと、兄弟子である次郎兄は、宵闇の中で刀を振り回していた。いつの間に脱いだのか、兄は、上半身を裸にしている。隆々たる身体から蒸気が上がっている。満月のためか、思いのほか明るい野外に、景虎が輝いていた。

……正直、面倒くさい。

我々は、昼から酒をやっていた。浪士は暇なのだ。私もそこそこ酔っていて、いまいち視界がおぼろであった。
「薪!薪はまだか!」
兄がうるさい。

誓って言いたい。このとき私が酔っていたのは確かであるが、兄も、間違いなく酔っていたはずだ。だから私は、まあいつものことだと思って、兄に向けて薪を投げ上げたのだ。


# 承

"奥義を会得した"。

我々の酒宴の終盤に差し掛かると兄はいつもそう言い出し、刀を携えて庭へ出る。私にも外に出てくることを命じて、決まって、薪を投げさせた。なんということもない、酒に酔って気の抜けた太刀筋で、私が投げ上げた薪に斬りかかり、かろうじて木っ端を飛ばすだけ。特に形を変えていない薪が地面に落ちて、数秒、兄は固まる。そして、
「寝る」
とだけ私に告げ、部屋に入ると、確かにそのまま寝る。兄にとってこれは入眠の儀式なのかも知れない。


# 転

今回も、私は、何気なく薪を投げ上げた。
ああ、早く終わらないかな。小屋の酒を取ってきたら怒られるかな。

ひゅおう、カココン

空中に鳴いた音に兄を見ると、兄はすでに刀を鞘に収めており、私が投げ上げた薪は、4ツに割れ、地面に落ちていた。

「酔いも醒めるような」という表現があるが、それがまさにこの瞬間だった。理解が及ばない事象に立ち食わすと、人体は、"酔い"などという些末な身体の異常を打ち消すことができるのかも知れない。

兄は、仁王に立ち、己が4ツ割にした薪を眺めている。月光に浮かぶ薪の断面はなめらかで、兄の抜刀術の精密を映し出していた。

私は、何も言えなかった。

正直に言うと、よく見てなかったからだ。
カココンという音がしたから、私が飛ばした薪を兄が二回斬ったのだと思う。実際、そこに4ツ割の薪が落ちている。そうだとしたら、これは確かに、狭間幻鏡流の奥義に達しているかも知れない。空中で薪を斬れるか?それも2回も?いや、おかしいでしょ。

とんでもない出来事に立ち会った――。


# 結

「小三郎」
「……はい」
ちょっとこの人やばいなと思い改めて、私は努めて冷静に応えた。
「俺はこれが狭間幻鏡流の奥義じゃないかと思う」
兄が、鬼の形相で言う。兄の機嫌を損ねないためだけに、私は神妙に「そう思います」という顔をする。できていたと思う。
「俺はこれが奥義ではないかと思う」
2回言うな。
「お前にも伝えておこうか」
いや、いいよ、いいですから。私ちょっと酔い醒めましたし、ちょっと怖くなってきました。
「狭間幻鏡流は"空の呼吸"が重要なんだ」
やめて、教えないで、怖い。
「まず、体の横につけるように、かたにゃ……、刀を構えるんだ」
うん?
「それから、いたたちめ……、一太刀目は空を割くように。それから、ふたたちみゃ……は、こう……、闇を裂くように……」
なんて?
「……兄さま、酔うておられますよね?」
問わずにはいられなかった。
「いや、酔ってはおらん。酔ってこの奥義を執り行えようか」
奥義っぽいもの見せられた手前、文句が言えない。
「しょ、正直に申し上げまして、兄さまは素面であるとしても、私は酔うております…!
 申し訳ございませぬ…! また明日に伝授していただけませぬでしょうか……!」
精いっぱい取り繕う。
「小三郎、酔うておったか。しょれ……、それならば俺ももう眠るとしよう」
しょれって言った?
まあいい好機だ。手元の猪口の酒を飲み干し、盆の上に置く。
「はい、もう床に就きましょう」
廊下に上がった兄の目が光り、刀の光が閃く。

剣筋がまったく見えなかった。おそらく、狭間幻鏡流 秘伝・花落線剣。私に見せてくださったのか。兄が剣に手を懸け動いたと思った瞬間、気付いたときには兄は刀を収め、私の後ろを歩いていた。そして、私の猪口が、無数の切り口をともなって割れていた。この数瞬のあいだに兄が斬ったのだ。すさまじい。すさまじいけど、なんで俺のお気に入りの猪口を割ったんですか。

兄は、
「寝る」
と告げると部屋へと入っていった。

私は、明日から酒を控えようかと思った。この人と過ごすの怖い。