2. 私とラム肉 - 始点と発展 -

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ラムよ、遠きラムよ

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正直に言うと、私が、いつラム肉に出会い、どのような過程で好きになっていったのか、説明ができない。いつの間にか出会い、いつの間にか好きになっていた。まるで恋のようだ。

 

ラム肉との最初の出会いが思い出せない。
私は、大学進学のために広島を出たが、それよりも前にラム肉を食べたことはないとだけは断言できる。そのあとの記憶は曖昧だが、最も有力に思えるのは、2012年の初夏だ。大学の研究室時代に北海道の苫小牧の研究所に行く機会があって、そのときの振舞いバーベキューで初ラムを経験した可能性が高い。しかし特段の記憶がない。第一印象が記憶にないのだ。むしろ、そのときに姫竹も供されてそれが猛烈に美味かったこととか、なぜか研究所のガレージにビールサーバーがあったとか、同行したポスドクが巨大トラクターに乗ってはしゃいでいたことの方をよく覚えている。

 

続く記憶として、2012年の冬に北海道を旅行したときのことが挙げられる。そのときに訪れた焼き肉屋でラムを頼んだのは間違いない。美味しかった。残念ながら写真を残していない。でもこれが初体験でないとも断言できる。やはり僕はこれよりも前にラムに出会っている。

 

このあたりからラムが気になり始めた。そしてしばらくラムとの淡いつながりが生まれる。

当時、私は茨城に住んでいたのだが、カスミというスーパーでは、まれにラムのこま肉が売られていた。それまで目に入っていなかったけど、気になり始めるとラムのパックが見えるようになった。豚こまよりは少し高いけど、牛こまほど高くもない。フライパンでラムこまを焼いて野菜を炒めて、疑似的なジンギスカンのようのものを作っていた。

 

そういう日常は写真として残さないものだ。しかし、私は日々のメモを日記で残すという習慣を持っている。これまでのメモについて、ラムに関する記録をあさった。5件ヒットした。引用するが赤裸々な過去についてはここでは見逃してほしい:

2013/04/30 火
とりあえずZZを観る。だめだ,プルがかわいい。もう授業サボって全部見ようと決める。8:00くらいから酒を飲み始める。
昼頃,昨晩買ったラムが美味しかったので,再びとりせん*1。戻ってからひたすらZZ。17:00ごろ,ぜんぶ観終わった。
奨学金のネットでの申請の締め切りが迫っていたのでサテライト*2。21:00前に帰ってきて,酒飲みながらトマトソース作ってすぐ寝た。22:00くらい。

2014/12/09 火
8:00起床。よく寝たし酒も残ってないしで好調。しかしめっちゃ寒い。朝飯(モツ煮),いくらか雑務メール,豚汁作成。
焦点距離と撮像素子の大きさと画角の関係をまとめる。豚汁で昼飯にして,12:30ごろ研究室へ。日曜に洗ったフィルターをセット,試運転。
フィルターお手入れ方法をhikiに記載。Tがゼミで導出した,任意高度における沸点を復習。ゼミ準備ゼミ準備。22:00帰宅。ゼミ準備。
ラム肉とタマネギを炒めてアテに酒。ゼミ準備。まだ終わってないけど2:00閉店。最近スライド凝り過ぎですよ。3:00就寝。

2015/07/01 水
12:00起床のつもりがうっかり16:00起床。昨日作った常備菜で米を食う。シソの醤油漬け美味え。妙に眠い。19:30ごろ、暗くなってきたのでカスミへ。
昨日買えなかったいくらかの材料を購入。あと、3割引くらいだったけど寿司も買った。帰宅。寿司美味い……。酒飲みつつぼんやりネット。眠い。
何かしなきゃと思って、23:00くらいからバックアップルールの制定、バックアップの実行など。それから来週の東京行きでビジホが使えるのではと色々と検索。
寝ますかねと思ったが、肉が食いたくなったので、カスミで買った半額ラム肉を野菜とともに炒める。美味い。6:00ごろ寝ましたかね。

2015/10/23 金

- ラム肉けっこう好き。牛>=ラム>豚=鶏って感じ。

2016/02/03 水
8:00に目が覚める。しばらく布団待機。10:00起動。家事。11:00出発。修論かりかり。16:00ごろ提出。お疲れさん。ゼミ。Nさんが恵方巻きとか買ってきてくれて、
M・M・N・Kとで食べつつ雑談。20:30ごろ帰路に立つ。トライアルで買い物。帰宅してザッと酒を入れて雑務。ラム肉おいしいです。0:00ごろ寝る。

 

ラムとの淡い関係はその後もしばらく続いた。
私は2016年3月に大学院を修了し、4月に就職をした。しばらく新潟にいたが、11月に異動し、1年半ほど東京の東中野に住んでいた。マンションの目の前にマルマンストアというスーパーがあって、ここではラムの切り落としがほぼ常設で売られていた。相変わらず、野菜とたれとで炒めて疑似ジンギスカンをよく作っていた。このスーパーには、まれにラムのタンも売られていて、これも好きだった。食感は豚タンに似ていて、味はラム。ラムタンはそれ以降 食べることができていない。また食べたい。

 

このあたりで、「俺はラムが好きだ」とはっきり意識した。そう気付くのに、推定的な出会いから言えば4年かかった。

もっとちゃんとしたラムを食べてみたくなり、2018年12月、インターネット肉屋でラムのスペアリブを頼んだ。

yamasaki1ma.hatenablog.com

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ラムのスペアリブ。左: かたまり、中: 切った: 右: 焼いた

 *

「ラムってどんな味なの?」と、ラム未体験者に訊かれたとしても、うまく答えられない。それは、「豚ってどんな味なの?」と、豚未体験者に訊かれれるのと同じことだ。
「……なんかこう、ミルキーというか」「……草っぽいというか」そういう曖昧なことしか言えない。好きであるがゆえに、どうして好きなのかをかえって説明できない。

 *

 

そして、時間は飛び、2019年7月。私は北海道の大樹町に居た。

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さすがの北海道である。ジンギスカン用のラム肉をいつでも入手することができた。基本的には平日は食事が提供されたが、休日は各自で食事をする必要があった。他の肉には眼もくれずにラムを食べまくった(同じくらい魚介も食べたが)。

炭火で行うバーベキューでも、肉は、タレ付けのラムだけだった。ビールとともに、狂ったように食べた。考えてみると、正式なジンギスカンって俺食べたことないなと気付いたけど、炭火で焼いたラムの美味さの前にその気持ちは掻き消えた。

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ガレージで行われるバーベキュー

 

そうして、ゆっくりと沈み込んでいくように、僕はラム肉の沼に膝くらいまではまりこんでいった。それは悪いことではない。美味いと感じる食べ物が多いことはよいことだ。北海道から戻って、そのまま何もなければ、僕はこのラム沼にこれ以上は浸かることはなく、「俺、実はラムが好きでさー。あ、ほら、ここのお店、ラムあるから頼んでみようよ」と弱うざ絡みする程度のラム好きに収まっていたかも知れない。

 

だけど、大きな転機が訪れる。ニュージーランド渡航することになったのだ。しかも、主に羊肉を扱う精肉工場で働くことになったのだ。

ここから私は変質的なほどラムにのめり込んでいく。頭まで沼に沈んでしまった。

 

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*1:スーパーの名前

*2:大学のコンピュータ室のこと