北海道の大根農家で4か月ほど働いた記録

はじめに

2019/06まで無職してたんですが、高校の同期が所属する会社に拾ってもらって職を得ました。

この会社:

コピーネは農業関係の会社で、土壌の病原菌の解析を行う業務が半分、人手の足りない農家さんちに人材派遣する業務が半分。後者の業務として、私を含む3人が、2019/06/25から2019/10/15まで、北海道の大樹町という地域の大根農家さんちで働いてきました。

この農家さん:

... 「畑の真ん中だより」というブログが濃密で読み応えあります。

 

無事に任期を満了して実家に戻ってきた。記録を残しておこうと思う。


仕事内容

農家さんちで働くとなると、たいていは畑での作業になるらしい。収穫とか除草とか。
ここでの仕事はちょっと違って、ほとんどは選果場での作業だった。ここの農家さんは敷地内に選果場を持っている。収穫された大根を洗浄・選別・箱詰め・保存するための施設だ。

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白色のドーム状の建物が選果場

早朝に収穫された大根がこの選果場に運ばれてくる。運ばれてきた泥付きの大根はウォッシングマシーンに投入され洗浄される。洗浄された大根はコンベアに並べられ、出荷可否の選別を受ける。人の目チェックの手作業である。小さすぎる・大きすぎる・曲がっている・根が二股以上に分かれている・痛んでいる・虫食いがある・穴が空いている、こういう大根は廃棄される。出荷可と判断された大根は、サイズ別に等級を振られて、箱詰め・梱包される。等級の振り方は重量で決まる。M・L・2L・3Lの4段階の基準があるようで、コンベア上に設置されている重量計がその判別を自動的に行う。

この一連のライン作業を、13,4人がそれぞれ持ち場について回していく。

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選別・箱詰め・梱包あたりのライン

私の仕事は、収穫されてコンテナに詰めてある大根をウォッシングマシーンにひたすら投入していく、というものだった。

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投入を待つ泥付き大根。右奥のウォッシングマシーンで洗われる

ウォッシングマシーンは2レーンある。投入役2人と補助役1人のスリーマンセルで作業を行う。ブルーのフレックスコンテナ1基には約400本の大根が入っている。1日に処理するコンテナはだいたい60基。つまり、1人あたり30基、400本×30基=12,000本の大根を持ち上げてコンベアに置けば、その日の仕事は終わりである。

始業は8:30。まず1時間45分ラインが稼働し、15分休憩。そののち1時間30分ラインが稼働し、1時間の昼休憩。コンテナの数やラインに就く人数に依って終了時刻は前後するが、おおむね、15:00には選別作業が終わる。それから45分くらい掃除して解散である。実労働は6.5時間くらいだ。

基本的に週6日稼働の1日休みだった。これは事前に通告されていた通り。ただし、お盆休みや、大根の生育状態が良くないとか、台風で出荷の船が止まるとか、そういう理由で2,3連休が挟まることもあった。基本は日曜が休みということだったがずれることも多々あった。農家さんでの仕事なので仕方ないだろう。ちなみに、農家さんちで仕事をする場合は「雨が降っていたら休み」という感じで休日が決まるケースもよくあるらしいが、ここでの仕事は屋根の下で行うため天候は関係なかった。

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休みの日は仕事仲間とご飯を食べに行ったり

「おもしろい仕事でした?」と聞かれたら、……いやまあ……おもしろいとは言いがたいが……だってずっと大根持ち上げてコンベアに置くだけだし……、悪い仕事ではなかったと思う。作業しながら3人で喋ってもいいし、黙ってやるなら考え事もできる。食べ物という人の生活に欠かせないモノに関わっているのだ、という気位も持てる。

個人的には「純粋な肉体労働」が新鮮だった。

無職になるまで3年くらい私はSEをしていた、完全なるデスクワークだった。ここでの仕事の最初の1,2週間、業後にはもうバッキバキに疲れていた。これまでにないほど腹が減る、それゆえにめっちゃ飯を食う、なのに1ヶ月で3kg痩せた。65kg→62kg。それでも体は慣れていくものである。だんだんと筋肉が付くのだろう、徐々に疲れないようになった。現在の体重は64kgだが、62kgからの2kgの増分は筋肉だと思われる。ここでの仕事を終えた今、明らかに、ここに来る前よりもシルエットがすっきりした。さらにいえば、どう考えてもSE時代よりも健康になっている。慢性的な体調不良がたたって前職を辞めた私としては「こういう健やかな暮らし方もあるんだな……」と思ってしまう。


日々の暮らし

寝泊まり

この農園には2つの寮がある。それぞれ、新寮・古寮と呼ばれている。

新寮の2Fには、ユニットバス付きの個室が6つあり、社員およびアルバイトを6人まで収容できる。1Fには会議室と食堂とキッチンが併設されている。

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新寮と食堂

古寮は1階建てのプレハブ小屋で、共用のリビング・風呂・トイレと、3つの個室を有している。

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古寮・リビング・個室

我々3人は古寮で寝泊まりすることになった。新寮には朝早くから収穫に出る社員さんも寝ているから19:00-20:00には電気が消えてみな眠りに就く。新寮から離れている古寮は委細に関係ない。リビングでよく酒盛りしてた。

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イエーイ

通勤

選果場も寮も敷地内にある。寮から選果場まで徒歩30秒くらいである。通勤という意味ではなんら不自由はなかった。敷地内に寮があるというのはけっこう珍しいみたい。そういう意味では非常に恵まれた職場だった。


食事

仕事のある日は朝昼晩の3食が提供される。朝ご飯は、新寮の食堂の冷蔵庫から好きな物を取り出して食べるスタイル。昼ご飯と晩ご飯は、大石さんちの親族であるFさんが作ってくださる。美味しいんだこれが。

農家さんちらしく、レシピは野菜を使ったものが多い。1週間の献立をメモしてみた。こんな感じ:

7月21日(日):
- 昼: 炊き込みご飯, 味噌汁, 茹で野菜に鰹節のせたの
- 夜: 米, 味噌汁, 茹で大根に肉みそかけたの, きゅうりとカニカマの酢の物, 南蛮味噌
22日(月):
- 昼: 米, 味噌汁, サバ味噌, 白菜と豚肉を煮たの
- 夜: 米, 鮭汁, 切り干し大根の煮物, マカロニサラダ
23日(火):
- 昼: 米, 味噌汁, 鶏のから揚げ, きゅうりとわかめの酢の物
- 夜: 米, 味噌汁, 青椒肉絲, シーチキンとトマトのサラダ
24日(水):
- 昼: 米, 餃子スープ, サンマ, おでん
- 夜: 米, 味噌汁, 酢豚, コロッケ
25日(木):
- 昼: シーフードカレー, カニカマとトマトのサラダ
- 夜: 米, 味噌汁, 豚肉と大根の煮物, もやしナムル
26日(金): 選果場お休み
27日(土):
- 昼: 米, 味噌汁, さんまの煮つけ, 切り干し大根と豚肉の煮物
- 夜: 米, 味噌汁, 豚肉と白菜の煮物, きゅうりの酢の物
28日(日):
- 昼: 米, 味噌汁, とんかつ, ポテトサラダ
- 夜: 米, 味噌汁, 豚皿, 野菜の何か
29日(月):
- 昼: 米, そうめん, 手羽大根, 漬物
- 夜: 米, 味噌汁, とんかつ, きゅうりとカニカマの酢の物

選果場が休みの日はFさんもお休みなので、おのおの生き延びる必要がある。

気候

大樹町は、北海道の道東に位置する。あのあたりって涼しいらしいねという想像のとおり、夏でも過ごしやすい場所だった。8月初旬の1週間くらいだけは気温も30度まで上がり、選果場も蒸して危うく熱中症になりかけたけど、それ以外は 本州の気温 - 10℃ くらいで気持ちよく過ごせた。だってお盆の時期でこれだもん:

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10月に入ってからは朝の気温が1桁で、最終日の10月15日あたりに至っては氷点下だった。暑いのが嫌いな方にはうってつけの地。

町までは遠い

この農園は、大樹町の中心から10kmくらい離れている。遠い。その道すがらに商店はない。畑と牧場しかない。町まで出れば、スーパー・コンビニ・ドラッグストア・ホームセンターなどの店があり、暮らしに必要な物品は問題なく揃う。町まで出るためには車なりバイクなりがないとなかなか不自由する。自転車(貸してもらえる)で町まで出られないことはないが片道40分くらいかかる。2回だけ自転車で町まで出たが、……なかなかしんどかった。仕事仲間のなかには、1日の仕事が終わってから自転車で町まで行く剛の者も居た。すごいなと思った。

ネット環境

(新寮の事情はよく分からないけど)古寮にはネット環境がなかった。WiMAXルータを使っていたから持っていこうと思っていたけど、対象エリア外だった。携帯の4G回線は(ちょっと弱いけど)入るので、通信上限を上げてなんとかした。

 

おわりに

もっと詳細に書きたいが次の仕事まであんまりヒマがない。ぼつぼつ追記するかも。

この農家さんは、毎年、シーズン(6月下旬~11月中旬)が近づくとバイトの募集を出しているようです。北海道で農作業してみたいという方はエントリーしてみてはいかがでしょうか。サイトのリクルートページに募集が掲載されます: 

その他、北海道での生活はFacebookにもろもろ投稿しています。公開の設定にしているので、気になる方は眺めてみてください:

https://www.facebook.com/profile.php?id=100034555892596