小説

酔心抜刀術 兄弟之噺

# 起 夕刻、私と酒を飲んでいた兄は、不意に黙りこみ、片の掌で口元を覆うと、四半刻ほど固まっていた。このように兄が己の世界に入るのはいつものことである。そのあいだ私は酒を進めていた。囲炉裏の火が揺れていた。 ふいに兄が意識を取り戻した。「小三…

【小説】二人のスーツの男

俺は、東京の中小IT企業戦士だ。今日も激務を生き抜いて終電である。俺が使っているこの路線の終電は意外と混んでいない。まあ毎度立たないといけないレベルだが。 今年で30になった。会社から役職を与えられ、後輩もそこそこできた。俺は、大学では冴えなか…

【小説】私の心で空を飛ぶ

半月よりもすこし膨らんだ月が沈むころ、今夜も私は出かけることにする。 寝巻の上にセーターとコートを着込む。耳まで隠れるニット帽をかぶる。くちびるに厚めにリップを塗る。マフラーで顔の半分を隠す。手袋をつける。 部屋の電気を消して、音が鳴らない…

小説: 嘘つきなあなた

# 起 私は残業を終え、自宅のマンションへと帰宅する。いつもよりは早く仕事が終わったのかな、私を迎えてくれたあなたの笑顔を見て、私はホッとする。 「先に帰れたんだ。簡単だけど夕飯は作ってある」「ありがとう。先にシャワーを浴びたい」「どうぞよか…

小説: 砂漠のカフェ

いろいろ小説投稿サイトを比較したけど、どうも、「なろう」に引っ張られているのか、純文学(謎)を募っているサイトが見つからないので、ここに晒す。 本当にコメントが欲しい。「クソダボがこんなの読まれへんわ」とかでいいんで感想が欲しい。 ---- タイ…